「クライアント」に「様」や「さん」を付けた呼び方はおかしい?

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「クライアント」に「様」や「さん」を付けた呼び方はおかしい?

ビジネスシーンでは取引先の企業や担当者に「様」をつけて呼ぶのが一般的です。「お客様」「取引先様」「お得意様」などと敬称とセットで伝える呼び名ですね。

では、「クライアント様」「クライアントさん」などと、カタカナの言葉に「様付け」や「さん付け」にするのは正しい表現なのでしょうか。

慇懃無礼になっても困るし、かといってそのままでも大丈夫?と悩むところですよね。

しかし、結論からお伝えすると「クライアント」に「様・さん付け」のような敬称は必要ありません。

今まで不安を感じていたあなたも、これからは迷わず使えるよう、ここでは「クライアント」に「様」「さん」をつける正しい呼び方について詳しく解説します。

「クライアント」の意味・使い方

「クライアント」の意味は3つあります。

  1. 得意先。顧客。
  2. カウンセリングなどの心理療法を受けに来た人。
  3. コンピューターネットワークにおいて、サーバーの機能やデータを利用する側のコンピューターのこと。

ビジネスでは上記のうち、「得意先。顧客」の意味で使われます。特に、広告代理店が広告主のことを呼ぶときに「クライアント」と言いますが、そのほかにも、弁護士や会計士、建築士が依頼人を指していうこともあります。

取引先のことを「クライアント」「クライアント様」「クライアント企業様」などと呼ぶのですね。

「クライアント」に様を付けた呼び方は誤用表現?

では、自社のサービスを提供する相手であり、敬意を払うべき相手でもある「クライアント」には「様」の敬称をつける必要はあるのでしょうか。

答えは冒頭に申し上げたとおり、「様」をつける必要はありません。なぜなら、「クライアント」にはすでに「お客様」という意味があるため、そこに「様」をつけると「お客様様」となり、二重敬語になってしまうからです。

二重敬語とは

敬意を示すために丁寧に表現したつもりでも、二重敬語になると相手に違和感を与えます。敬称に関する代表的な二重敬語の表現をいくつか挙げてみます。

【敬称の二重敬語】

  • ×:山田社長様 ⇒ 〇:山田社長
  • ×:田中部長様 ⇒ 〇:田中部長

役職は敬称が含まれた表現です。「社長」「店長」「校長」には「様」が必要ないのと同じように、「クライアント」に「様」をつける必要はありません。

ほかにも二重敬語の間違い表現はありますが、ここではまず「立場や役職に敬称はつけない」というポイントを押さえておきましょう。

「クライアント」にさん付けは?

「クライアント様」は二重敬語のため間違い表現だとお伝えしました。では、「クライアントさん」のような「さん付け」はどうでしょうか?

こちらも意味合いとしては「お客様さん」となり、日本語としておかしな表現になるのはもちろん、相手に馴れ馴れしい印象を与えることもあります。「さん」は敬称のなかでも、「親しみのこもった呼称」であるとされています。

カウンセラーやコンサルタント業をしている人には、あえて顧客のことを「クライアントさん」と呼ぶ場合もありますが、目上の人を指すときは避けたほうが無難です。

どうしてもクライアントに親愛の情を示した表現をしたいときは「クライアントの〇〇さん」と伝えたほうが良いでしょう。

ちなみに、同業他社のことを「〇〇工業さん」「〇〇商店さん」と呼ぶのを見聞きすることがありますが、この呼び方も本来の日本語の使い方としては正しくはありません。

「ユーザー様」「ユーザーさん」の呼び方は正しい?

「クライアント」以外の、カタカナの呼び方に「ユーザー」があります。「ユーザー」に「様付け」や「さん付け」で呼ぶのはどうでしょうか。

「ユーザー」の意味は「商品の利用者、使用者」であることから、企業にとってのお客様という点では「クライアント」と共通しています。

そのため、「ユーザー」も「クライアント」と同様に「様」や「さん」をつける必要はありません。「ユーザー」のみで間違いありません。

ただし、「クライアント様」「ユーザー様」は許容された表現でもある

「クライアント様」「ユーザー様」はどちらも二重敬語であることをお伝えしました。

ですが、ビジネスシーンでは誤用表現であるにもかかわらず、広く使用され、慣習として許容された表現も数多く存在します。

その代表格が「お客様各位」です。「各位」は敬称のため、「お客様」のあとにつけると二重敬語になってしまいますが、「お客各位」の表現だと呼び捨てにしているような印象があることから、ビジネス文書やメールの宛名には「お客様各位」と書くのがマナーとなっています。

そのため、「クライアント様」や「ユーザー様」の呼称も誤用ではあるものの、相手に尊敬の念を込めた表現として使っても失礼にはあたりません。

社内で取引先や顧客をさして会話するときは「クライアント」、その顧客の前で相手のことを指すときは「クライアント様」と呼ぶなど、会社の風習に従って使い分けをすることが大切です。

さいごに

ここでは「クライアント」「ユーザー」の呼び方について、正式には「様付け」「さん付け」は必要ないことをお伝えしました。

ですが、最も大切なことは受け取り手がどのように感じるかということ。今まで敬称を付けていた人が、いきなり敬称を外されると不快に感じるかもしれません。

一般常識と慣習をバランスよく身につけ、場面に応じて使い分けることがビジネスシーンでは重要なのです。

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