文章を書く時に、同音異義語の使い分けに困ったことはありませんか。同音異義語は間違ったものを使ってしまうと途端に意味が通じなくなってしまいます。
ここでは「ある」の同音異義語「有る」「在る」「或る」の意味の違いについてまとめました。とりわけ、「有る」と「在る」は意味が似ているため使い分けが難しい言葉です。例文や慣用句も参考に、是非正しい使い分けをマスターしてください。
「有る・在る・或る」の違い
「ある」の同音異義語には、「有る」「在る」「或る」があります。それぞれの意味や使い方、違いを見ていきましょう。
「有る」の意味・使い方
「有る」は大変多くの意味を持ちますが、主な意味として「事物が存在する」「自分のものや付属として持っている。所持・所有している」「事が起こる。事柄が発生する」が挙げられます。
「有る」は「備わる」「含まれる」「持っている」といった幅広い意味がありますが、反対語が「無い」ということからもわかるように「有る」は「存在する」というニュアンスを強く持っています。
「有る」の慣用句や熟語には以下のようなものがあります。
【慣用句や熟語】
- 有るがまま:今ある状態のとおりで。今のまま。
- 有り勝ち:よく似た例がたくさんあるさま。
- 有り難い:存在しがたい。珍しい。めったにない。
- 有り得ない:あるはずがない。ありそうもない。そうなる可能性がない。
「有る」は、使い方によってはひらがなで書くことが好ましい場合があります。特定の語句と結びついた「-とあれば」「-だけのことはある」という使い方や、補助動詞として「伝えてある」「閉めてある」「-である」のように使う場合は、基本的にひらがなで「ある」と表記します。
また、「有る」の使い分けに自信がある時は漢字で表記することで意味が通じやすくなりますが、そうでなければ間違えた字を使うよりもひらがなで表記した方が賢明です。
「有る」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- 有りがちなデザインだという理由で突き返された。
- もし願い事をひとつ叶えてくれるなら、有り余る富が欲しい。
- おやつが戸棚の中に有ったような気もするが、無かったかもしれない。
「在る」の意味・使い方
「在る」の意味は、「有る」と同じく「存在する」です。辞書においても、「有る」と「在る」は同じ項目にまとめられています。
しかし、「在る」は実際には「その場所に存在する。位置する」「ある場所に身を置く。また、特定の位置・状態にいる」「人が存在する。居る」といった意味で用いられています。
つまり「在る」は、位置や状態、環境、状況、地位、時代などの様々な場面で存在する場合に使う言葉と言えます。「有る」と「在る」の使い分けは、「有る」は「所有」、「在る」は「存在」という意味合いが強いことを念頭に置くと判断しやすくなります。
「在る」の慣用句や熟語には以下のようなものがあります。
【慣用句や熟語】
- 在り処(ありか):物のある場所。人のいる場所。所在。居所。
- 在り来たり:珍しくないこと。ありふれていること。また、そのさま。
「在る」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- 責任の在り処(ありか)かをはっきりとさせるべきだ。
- 本社は東京に在るが、実務は大阪支所がメインである。
- 昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんが在りました。
「或る」の意味・使い方
「或る」の意味は「はっきり名を挙げずに物事をさす語」「漠然と物事をさしていう語」です。「或る」は「有る」「在る」とは意味が大きく異なりますが、使い方においても大きな違いがあります。「有る」「在る」は「存在する」といった意味の動詞として使いますが、「或る」は連体修飾語として名詞を修飾する言葉です。
「或」の字は表外漢字で常用漢字表にないため、法令,公用文書,新聞,雑誌,放送等一般の社会生活においては使用を避けられています。したがって、ビジネスシーンにおいても特別なこだわりがない場合は漢字で表記することは避けた方が無難です。
「或る」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- 昔むかし、或るところにおじいさんとおばあさんがいました。
- 或る日、おばあさんが川で洗濯をしていると、上流から大きな桃が流れてきました。
- 或る人は「下を向いていたら、虹を見つけることはできない」と言い、また或る人は「虹を求めるのなら、雨に耐えなければいけない」と言った。
さいごに
今回は「有る」「在る」「或る」の意味の違いや使い方についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
同音異義語は正しく書き分けることができないと、文章の意味が変わってしまいます。「有る」は所有、「在る」は存在、「或る」は名詞を修飾する言葉と覚えておきましょう。このまとめを読んで、「有る」「在る」「或る」を適切に使い分けられるようになるよう応援しています。