皆さんはビジネスシーンで「○○があるかどうか」を尋ねる時、相手にどのように質問していますか。
「○○はありますでしょうか」はしばしば見聞きするフレーズで一見丁寧な尋ね方に見えます。しかし、実は間違った敬語です。
ここでは、「ありますでしょうか」がなぜ間違った表現なのか、その理由と正しい言い換え表現をご紹介します。
正しい敬語で質問できるよう、是非この機会に確認してくださいね。
目次
「ありますでしょうか」は間違った表現
「ありますでしょうか」は、「存在する」「所在する」「所有している」ことを尋ねる際に使われるフレーズです。
しかし、「ありますでしょうか」は敬語表現として誤りです。間違った敬語である理由は、フレーズを分解すると理解しやすくなります。
- あり:動詞「ある」
- ます:丁寧の助動詞「ます」
- でしょ:丁寧の助動詞「です」
- う:推量の助動詞「う」
- か:疑問の終助詞「か」
このように一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」といいます。二重敬語は習慣として定着している一部のものを除いて、一般的には敬語として適切ではないとされています。「ありますでしょうか」は動詞「ある」に対して丁寧語が「ます」「です」と二つ使われているため、二重敬語という誤った敬語表現なのです。広く使われている二重敬語には他にも、「ございますでしょうか」「ございませんでしょうか」があります。
ちなみに、習慣として定着しているとされる二重敬語には「お召し上がりになる」「お見えになる」「お伺いする」「お伺いいたす」などがあります。
「ありますでしょうか」の正しい言い換え表現と使い方(例文つき)
「ありますでしょうか」を正しい敬語にするには、二重敬語の原因である丁寧の助動詞「ます」「です」のうちどちらかを取り除く必要があります。そうしてできた正しい敬語表現が「ありますか」「あるでしょうか」「ございますか」「おありですか」です。
まず、「ありますか」は「ありますでしょうか」の最もシンプルな言い換え表現です。
丁寧の助動詞「です」だけでなく推量の助動詞「う」も省くことで、あるか否かをストレートに問う表現になっています。実際には「何か心配事はありますか」「データはありますか」といったように使いますが、これは親しみやすさがある反面、ビジネスシーンで使うには丁寧さに欠けた言い回しです。「ありますか」はややカジュアルなフレーズとして、相手の立場に注意して使う必要があります。
次に、「あるでしょうか」ですが、これは「ありますでしょうか」から丁寧の助動詞「ます」のみを除いた表現です。推量の助動詞が残っているので、直接的に尋ねる「ありますか」に比べて柔らかい印象で問い掛けることができます。
「ありますでしょうか」の正しい言い換え表現として、ビジネスシーンで最も多用されるフレーズが「ございますか」です。
「ありますか」の「ある」を丁寧語「ございます」にしてできた語であり、「ありますか」「あるでしょうか」に比べて一層丁寧な問い掛けのフレーズとなります。相手が目上の時はもちろん、企業の窓口として取引先やお客様に接する時など、丁寧な態度を示したいのなら「ございますか」を使って「お約束はございますか」「ご不明な点はございますか」と尋ねるのが適切です。反対に、親しみやすさを強調したいなら「ありますか」「ございますか」を使うと良いでしょう。
最後に「おありですか」ですが、これは動詞「ある」を尊敬語の一般形「お~です」に当てはめた疑問文です。今まで挙げた「ありますか」「あるでしょうか」「ございますか」は語を単に丁寧にしたフレーズでしたが、「おありですか」は相手を立てるための敬意がこもったフレーズです。相手を敬って尋ねる際に「そちらに在庫はおありですか」といった形で用います。もし敬意を示す対象が話題となっている人物ではなく話し相手の方なら、「おありですか」ではなく「A社さんの方に在庫はございますか」を使います。
「ありますでしょうか」の正しい言い換え表現を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- 皆さん、お手元に配布資料はありますか。
- 詳細をご案内したいのですが、この後お時間はあるでしょうか。
- お買い上げの商品について、他にも何かお気づきの点はございますか。
- 社長はこちらの製品に関心がおありですか。
「〜ますでしょうか」も間違い!正しい言い換え表現は?
ここでは「ありますでしょうか」と同じく二重敬語「~ますでしょうか」を使った代表的なフレーズと、その正しい言い換え表現をご紹介します。
「いらっしゃいますでしょうか」
「いらっしゃいますでしょうか」を正しい敬語に言い換えると「いらっしゃいますか」です。
電話でのやりとりで多く使われるフレーズで、「○○様はいらっしゃいますか」と呼び出しをお願いする際に使います。他にも、目上の人や取引先に対して「明日は会場にいらっしゃいますか」と出欠を確認する際にも使うことができます。
「ございますでしょうか」「ございませんでしょうか」
「ございますでしょうか」「ございませんでしょうか」を正しい敬語に言い換えると「ございますか」「ございませんか」です。
前述したように、ビジネスシーンでは「この商品の在庫はございますか」「ご不便はございませんか」と有無を丁寧に尋ねることができます。
「おりますでしょうか」
「おりますでしょうか」を正しい敬語に言い換えると「おりますか」です。
「おる」は自分側の者について「いる」を丁寧にした語です。したがって、身内が居るかどうかについて尋ねる際に「うちの佐藤はそちらにおりますか」と使います。
「いただけますでしょうか」
「いただけますでしょうか」を正しい敬語に言い換えると、「いただけますか」です。
何かが欲しい時や何かをしてもらいたい時に「資料を一部いただけますか」「確認していただけますか」というように使います。ただし、「いただけますか」は直接的に催促する表現です。ビジネスシーンではより婉曲的で柔らかい「資料を一部いただいてもよろしいでしょうか」「資料を一部いただくことは可能でしょうか」といった表現が好まれます。
「お願いできますでしょうか」
「お願いできますでしょうか」を正しい敬語に言い換えると、「お願いできますか」です。
「お願いできますか」は、何かをお願いする際に用いるフレーズです。「確認をお願いできますか」「修正をお願いできますか」といった形で用いますが、ストレートな言い回しのため強制するような印象を持たれてしまう恐れがあります。ビジネスシーンでは「いただけますか」同様に、「確認していただいてもよろしいでしょうか」「修正していただくことは可能でしょうか」という表現が広く使われています。
さいごに
ここまで「ありますでしょうか」についてご説明しましたが、いかがでしたか。
「ありますでしょうか」は「ある」について丁寧語が「ます」「です」と重ねて使われている「二重敬語」です。一般的に二重敬語は誤った敬語とされているため、ビジネスシーンでは他の語に言い換える必要があります。そこで、「ありますでしょうか」を正しい敬語に言い換えると「ありますか」「あるでしょうか」「ございますか」「おありですか」となります。それぞれ丁寧の度合いが異なるため、相手に与える印象や相手の立場、状況によって適切なものを選んで使いましょう。
ビジネスシーンでは、丁寧な言い回しを心掛けるあまり二重敬語になってしまうことがあります。このように度を過ぎた敬語は誤った表現になりかねないので注意が必要です。
この記事を読んだ皆さんが、「ありますでしょうか」の正しい言い換え表現をマスターできるよう応援しています。