「上げる・挙げる・揚げる」の違い|意味・使い方

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「上げる・挙げる・揚げる」の違い|意味・使い方

皆さんは「あげる」の漢字「上げる・挙げる・揚げる」の違いをご存知でしょうか。

「あげる」は日常会話でも非常によく使う言葉ですが、改めて文字で直そうと使い分けに悩んでしまうという方も多いかと思います。

ここではそんな「上げる」「挙げる」「揚げる」それぞれの違いについてまとめました。「あげる」の意味や使い方を、是非この機会にマスターしてくださいね。

「上げる・挙げる・揚げる」の違い

「上げる」「挙げる」「揚げる」は、辞書では同じ項目にまとめられています。それぞれの使い方に注目して慎重に違いを見ていきましょう。

「上げる」の意味・使い方

「上げる(あげる)」の意味は、「そのもの全体または部分の位置を低い所から高い方へ動かす、また、移す」「程度を高める」「物事を終わりにする」「人の目についたり、広く知られるようにする」です。

「上げる」の反対語が「下がる・下げる」ということを考えると、「上げる」の使い方は理解しやすくなります。「上げる」の意味は非常にシンプルかつ一般的で、幅広い場面で使えます。

「上げる」を使った慣用句には、以下のようなものがあります。

【慣用句】

  • 手を上げる:降参する。なぐろうとして手を振り上げる。乱暴をはたらく。上達する。
  • 腕を上げる:腕前・技術を進歩させる。飲める酒の量が前より増える。
  • 名乗りを上げる:自分の名を告げる。競争に加わることをはっきり示す。立候補する。
  • 音(ね)を上げる:苦しさに耐えられず声を立てる。弱音を吐く。降参する。

「上げる」を使った例文には、以下のようなものがあります。

【例文】

  • 彼が転職してきてから、あの部署は驚くほどの収益を上げている。
  • 駅前の再開発が進んだことを理由に、来年からこの部屋の家賃を上げるそうだ。
  • 皆そろって幕を上げられるよう、練習に励む。

「挙げる」の意味・使い方

「挙げる(あげる)」の意味は、「表し示す」「力などを出し尽くす」「はっきり分かるように示す」です。他にも「執り行う」「表し示す」「推挙する」「検挙する」といった意味もあります。

「挙」を使った熟語に「挙式」「列挙」「挙証」「挙兵」「挙手」があることからを考えると、「挙げる」の使い方は理解しやすくなります。

「上げる」と「挙げる」の違いはニュアンスに注目します。「挙げる」は単純な動作でなく、挙げる動作に伴って意思表示をする場合に用います。「諸手をあげる」を例に見てみます。「諸手を上げる」の場合は、単純に両手を高い位置へと動かしたことを指します。一方で、「諸手を挙げる」の場合は、注意をひくためといった何かしらの意味を込めて両手を高い位置へと動かしたことを意味します。

このように、「上げる」と「挙げる」は動作に意味が込められているかどうかで使い分けることができます。ちなみに、「諸手を挙げる」には他にも「無条件に、また積極的に歓迎する」といった意味があります。

「挙げる」を使った慣用句には、以下のようなものがあります。

【慣用句】

  • 星を挙げる:犯人また犯罪容疑者を検挙する。
  • 諸手(もろて)を挙げる:無条件に、また積極的に歓迎する
  • 槍玉に挙げる:槍で突き刺す。非難・攻撃の目標にして責める。
  • 兵を挙げる:兵を集めて軍事行動を起こす。挙兵する。

「挙げる」を使った例文には、以下のようなものがあります。

【例文】

  • 実力派ぞろいのオリンピック選手を、国を挙げて応援する。
  • 6月はジューンブライドといって結婚式を挙げる人たちが多い。
  • 具体例を挙げると、とてもわかりやすくなった。

「揚げる」の意味・使い方

「揚げる(あげる)」は、「上げる」の持つ意味をさらに限定した場面で使います。

「上げる」の意味には「人の目についたり、広く知られるようにする」がありますが、旗やたいまつを目につくよう高く掲げる場合には「揚げる」を使います。また、「上げる」の意味には「家の中に入れる」もありますが、芸者などを宴席に呼び入れる場合には「揚げる」を使います。他にも、「上げる」の意味には「低い所から高い方へ動かす」がありますが、船や積み荷を水上・水中から陸上へ動かす場合には「揚げる」を使います。

他にも、「揚げる」独自の意味として「揚げ物を作る」という意味もあります。「揚」を使った熟語に「浮揚」「荷揚げ」があることを考えると、「揚げる」の使い方は理解しやすくなります。

「揚げる」を使った慣用句には、以下のようなものがあります。

【慣用句】

  • 一旗(ひとはた)揚げる:事業を始めて身を起こす。成功を目指して新事業を起こす。
  • 名を揚げる:名声をあらわす。有名になる。

「揚げる」を使った例文には、以下のようなものがあります。

【例文】

  • 天候が落ち着いたので、ようやく明日から沈没船の引き揚げ作業が開始される。
  • 今年はプランクトンが多いのか、水揚げ量が去年より増えた。
  • 船が着いたので、これから全員で荷揚げをする。

「荷揚げ」の意味は「船から、積荷を陸に揚げること。陸揚げ」です。あくまで「荷揚げ」は船から積み荷を上げることで、登山で山の上へ荷物を持って上がる場合は「荷上げ」の字を使うのが一般的となっています。

さいごに

「上げる」の意味は非常に幅広く、「低い所から高い方へ動かす」「程度を高める」「物事を終わりにする」「人に広く知られるようにする」などがあります。

「挙げる」の意味は「表し示す」「力などを出し尽くす」「はっきり分かるように示す」です。「上げる」は単純な動作を指すのに対し、「挙げる」はその動作に意味が伴う場合に使います。「揚げる」の意味は、「上げる」の意味をさらに限定した「掲げる」「芸者などを宴席に呼ぶ」「水上や水中から陸上に移す」場面で使います。

その文がどんな意味を伝えたいもので、どの漢字が適切なのか、本記事や例文が参考になれば幸いです。

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