日本語には同音異義語がたくさんあります。実際に使い分けようとすると混乱してしまうという方も多いのではないでしょうか。
ここではそんな紛らわしい同音異義語の中でも「勧める」「薦める」「奨める」の違いについてご説明します。例文も一緒にご紹介しているため、より理解しやすくなっています。これを読んで、是非正しい使い分けをマスターしてくださいね。
「勧める・薦める・奨める」の違い
「勧める」「薦める」「奨める」の読み方はどれも「すすめる」で、語源も全て「進める」が元になっています。
「勧める」「薦める」「奨める」は全て相手に何かしら働きかけることを指した言葉ですが、すすめた結果相手にどうして欲しいのかに着目して使い分けます。それでは、それぞれの「すすめる」についてご説明していきます。
「勧める」の意味・使い方
「勧める(すすめる)」の意味は3つあり、「人がその事を行うように誘いかける」「物を供して、飲食または使用してもらおうとする」「積極的に実行するようにたすけ励ます」です。
一つ目の意味で使うのは、相手に何かを行って欲しいと誘う時です。これは「勧」を使った熟語に「勧誘」があることを踏まえるとわかりやすいでしょう。例えば、何かに加入するよう勧める、辞任するよう勧めるといった場合です。
二つ目の意味で使うのは、物をあげて食べたり使ったりしてもらいたい時です。例えば、椅子を勧める、お酒を勧めるといった場合です。街中やメディアでよく目にする「おすすめのお店」「おすすめの本」などは、これに該当します。
三つ目の意味で使うのは、良いこととして相手に何かを行うよう強く励ます時です。一つ目の意味とほぼ同じですが、三つ目の意味で使うのは、例えば貯蓄を勧める、習い事を勧める時です。
【例文】
- 怪我したところを消毒するよう勧める。
- とても美味しいお菓子をいただいたので、一緒に食べるよう勧める。
- どのルートで行くか迷っていたので、有料道路を通るルートを強く勧めた。
「薦める」の意味・使い方
「薦める(すすめる)」の意味は「ある人や物をほめて、採用するように説く」です。
これは「薦」を使った熟語に「推薦」があることを踏まえるとわかりやすいでしょう。例えば、会長職に薦める、定番商品を薦めるといった時に用います。
「勧める」と「薦める」の違いは、相手に働きかける目的です。「勧める」は何かを実行してもらいたい時、「薦める」は何かを採用してもらいたい時に使います。つまり、「このプランを勧める」とある場合は、プラン内容を相手に実行してもらいたいという意味合いを表し、「このプランを薦める」とある場合は、いくつかあるプランの中からこのプランを採択してもらいたいという意味合いを表します。「奨める」は自分が良いと思ったものを相手に紹介するといったニュアンスなので、「勧める」の相手の気持ちを変えたいという動機に比べて柔らかいニュアンスと言えます。
【例文】
- デートに行くならお薦めのスポットがあるよ。
- 次期リーダーとして、皆から信頼を集めている彼を薦める。
- 観光客にお土産として特産の地酒を薦めた。
「奨める」の意味・使い方
「奨める(すすめる)」の意味は「勧める」と同じです。
したがって、「人がその事を行うように誘いかける」「物を供して、飲食または使用してもらおうとする」「積極的に実行するようにたすけ励ます」の3つが挙げられます。
加えて、「奨」を使った熟語に「推奨」や「奨励」といったものがあることからもわかるように、指導する立場の人がそれを行うことが好ましいと促す意味合いもあります。政府が一般人に、上司から部下へと、教師から生徒へと何か行為を促す場合に用います。さらに、「奨める」に比べて「勧める」の方が、やや強く相手を説得するようなニュアンスがあると捉える人もあります。
さらに「勧める」との明確な違いとして、常用漢字表外か否かが挙げられます。常用漢字とは、内閣による告示で「「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」」とされている漢字のことです。
平成22年内閣告示第2号では、常用漢字として2,136字が登録されています。これによると、「勧」は読みとして「カン, すすめる」が登録されていますが、「奨」の読みは「ショウ」しか登録されていません。したがって、ビジネス文書では特別なこだわりがない限り、「奨める」の使用は控え、「勧める」に置き換えた方が無難です。
【例文】
- 自分のためにも、宿題を毎日きちんとこなすよう奨める。
- 上司からいつも飲み会では酒を切らさないよう気配りすることを強く奨められる。
- 古紙は重要な資源なので、リサイクルに出すことを奨める。
「勧める・薦める・奨める」の類語
「勧める」「奨める」の類語は以下の通りです。
【類語】
- 勧誘する:あることをするように勧めて誘うこと。
- 持ちかける:話を持ち出して働きかける。相手を誘うように話をしかける。
- 誘導する:さそいみちびくこと。人やものをある地点・状態にみちびいてゆくこと
- 助言する:助けになるような意見や言葉を、そばから言ってやること。
- 推奨する:すぐれている点をあげて、人にすすめること。
「薦める」の類語は以下の通りです。
【類語】
- 推す:人や事物を、ある地位・身分にふさわしいものとして、他に薦める。
- 推薦する:よいものとして人にすすめること。
- 推挙する:ある人をある官職・地位・仕事などに適した人として推薦すること。
さいごに
同音異義語の「勧める」「薦める」「奨める」の使い分けについてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
何かをおすすめした結果、相手にどうして欲しいのかに注目すると使い分け方がわかりやすくなります。また、「勧める」「奨める」の理解を助けるには「勧誘」や「推奨」、「薦める」の理解を助けるには「推薦」の熟語を連想すると良いでしょう。
どれも語源が同じなので意味も似ていて紛らわしいですが、正しく使い分けることで文章の意図がぐっと伝わりやすくなります。このまとめを読んで、適切に「勧める」「薦める」「奨める」を使い分けられるようになっていただければ幸いです。