「すみません」は日常生活でも頻繁に使われるフレーズのひとつです。
こうした日常で馴染み深い言葉をビジネスの場で使うとなると、カジュアルすぎるのではないかと心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは「すみません」の正しい意味や使い方をご紹介します。より丁寧でビジネスシーンにふさわしい表現や、語感の似た「すいません」との違いもご案内します。
使い慣れているフレーズだからこそ、ここで正しい使い方を改めて確認してみてくださいね。
「すみません」の意味
「すみません」は、「申し訳ない」というお詫びのフレーズです。
「すまない」の丁寧語で、相手に謝罪や感謝、依頼をするときに用います。「すみません」の成り立ちは、フレーズを分解してみると理解しやすくなります。
- すみ:動詞「済む」の連用形
- ませ:丁寧の助動詞「ます」の未然形
- ん:打消しの助動詞「ん」
このように「すみません」はいくつかの語が組み合わさって成り立っていますが、実際には連語としてひとつの単語のように扱います。
「済む」には複数の意味がありますが、「すみません」の場合の意味は「他人に対して言い訳が立つ。義理が立つ」です。これに打消しや反語の意を表す語を伴うことで、「言い訳が立たない」という意味になり、転じて「申し訳ない」という謝罪のフレーズとなりました。
「すみません」の使い方(例文つき)
「すみません」を使う場面は大きく分けて3つ、謝罪・お礼・依頼です。
とはいえ、「すみません」は非常に軽い印象を与えるフレーズのため、「すみません」が使えるのはこれらの場面のごく一部に限られます。
まず、最も多い「すみません」の使い方は、謝罪です。何かに失敗したり、相手に迷惑をかけたときに使います。ただし、大きな過失や相手に多大な迷惑をかけた場合に「すみません」を使うと、事態の深刻さや反省の気持ちが伝わりません。謝罪の「すみません」は、それほど重要ではない過失に対してのみ使います。
感謝を伝える際にも「すみません」を用いることができます。例えば、何かを頂戴したり相手に労力を割いてもらったなど、相手の厚意に対して感謝を伝える場面で使用します。ただし、「すみません」は軽いお礼の言葉です。基本的には、些細な事柄に対する簡単なお礼として使います。
なお、感謝の「すみません」は、「ありがたさが申し訳なく感じる」という謙遜のニュアンスを含んでいます。感謝のフレーズとして「すみません」を使うことは日本人らしい謙虚さが感じられるものの、近年では「ありがとう」等ストレートに感謝を伝える風潮になりつつあります。
依頼をする際は、「すみませんが」の形で前置きとして「すみません」を用います。相手に対して何かを依頼することは、相手の手を止めるだけでなく、相手に時間や手間の負担をお願いすることになります。そんな負担に対して恐縮する気持ちを込めて、依頼をする際には「すみませんが」というクッション言葉を用いるのです。
ここまで、「すみません」を使う場面に注目してご説明してきました。しかし、ビジネスシーンで「すみません」を使うには、相手の立場にも注意が必要です。
「すみません」には丁寧の助動詞「ます」が含まれていますが、実際には軽い印象を与えるカジュアルな言葉です。したがって、「すみません」は同僚や目下の人、親しい上司にのみ使えるフレーズとなります。
「すみません」を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- お待たせしてしまって、すみません。
- すみません。会議資料を自席に忘れてきてしまいました。
- お忙しい中わざわざ来ていただいてすみません。助かりました。
- パソコンをお借りしてすみません、すぐに終わらせます。
- すみませんが、この書類を50部コピーしてくれませんか。
- 急ですみませんが、13時から30分間だけミーティングさせてください。
「すみません」をビジネスシーンで使う際の敬語表現(例文つき)
さて、謝罪の「すみません」は同僚や目下の人にのみ使える、軽い印象のフレーズだとご説明してきました。それではビジネスシーンで目上の人や取引先に謝罪するには、どのようなフレーズが適切なのでしょうか。
ビジネスシーンでは、より丁寧な謝罪として「失礼いたしました」「申し訳ありません」「お詫び申し上げます」を使います。
「失礼いたしました」「申し訳ありません」は、どちらも日常生活で見聞きする機会が多いフレーズです。しかしながら、相手への敬意を含む表現なので、目上の人や取引先に対しても使用は問題ありません。なお、「失礼」の意味は「礼儀に欠けること」です。礼儀に欠ける言動を謝罪する際は、「申し訳ありません」より「失礼いたしました」の方がふさわしいと言えます。
また、「申し訳ありません」の「ある」を丁寧語「ございます」に替えると、さらに丁寧な謝罪のフレーズとなります。相手にしっかりと誠実に謝罪する場面では、丁寧な言い回しの「申し訳ございません」を使いましょう。
「お詫び申し上げます」は、重大な過失に対する謝罪のフレーズです。「お詫び申し上げます」には謙譲語の一般形「お~申し上げます」が使われており、相手に対して明確に敬意を伝えることができます。かなり丁寧な謝罪のフレーズなので、目上の人や取引先へ多大な迷惑をかけてしまった場合には「お詫び申し上げます」と謝罪をするのが適切です。
「すみません」の敬語表現を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- 先日はご挨拶に伺えず、失礼いたしました。
- 申し訳ありません。田中はただいま席を外しております。
- 大変申し訳ありませんが、この件について大至急確認をお願いいたします。
- この度は、お役に立てず申し訳ございませんでした。
- 多大なるご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
「すみません」と「すいません」の違い
「すみません」と「すいません」は非常に語感の似た言葉です。
「すいません」は「すみません」が言いやすいよう音変化した俗な言い方であり、意味において「すみません」と「すいません」とに違いはありません。ただし、本来の語の成り立ちという観点からみると、動詞「済む」の未然形「済み」を使った「すみません」が正しい言い方です。ビジネスシーンでは砕けた言い回しの「すいません」は基本的に使用せず、使うとしても親しい相手との会話でのみとなります。
「すみません」の類語・言い換え表現
「すみません」の類語には、以下のようなものがあります。
【類語】
- 恐れ入ります:相手の好意などに対して、ありがたいと思う。相手に失礼したり、迷惑をかけたりしたことに対して、申し訳なく思う。
- 恐縮です:相手に迷惑をかけたり、相手の厚意を受けたりして申し訳なく思うこと。
- ありがとうございます:感謝したり、礼を言ったりするときに用いる言葉。
- ごめんなさい:自分のあやまちをわびるときの言葉。
上に挙げた「恐れ入ります」「恐縮です」「ありがとうございます」は、丁寧な言い回しとして目上の人や取引先にも問題なく使うことができます。一方で、「ごめんなさい」はプライベートを中心に友人間などごく親しい相手に使う砕けた表現です。もしビジネスシーンで使うなら、同僚や目下の人のみとしましょう。
他にも、くだけた謝罪の表現には、「面目ない」「失敬」「勘弁」などがあります。
さいごに
ここまで「すみません」についてご説明してきましたが、いかがでしたか。
「すみません」は、謝罪やお礼、依頼の際に使えるフレーズです。丁寧語ではあるものの軽い印象を与えるため、ビジネスシーンでは同僚や目下の人、または親しい上司にのみ使いましょう。
目上の人や取引先へ向けた謝罪では、「すみません」の代わりに「失礼いたしました」「申し訳ありません」「申し訳ございません」「お詫び申し上げます」を使います。これらは丁寧の度合いが異なるため、相手の立場や謝罪する内容によって使い分ける必要があります。
ビジネスシーンでの過失は誰しも避けたいものですが、どんなに気を付けていても相手に迷惑をかけてしまう可能性があります。いざという時に備えて、適切な謝罪のフレーズを覚えておきましょう。
この記事が、「すみません」を適切に使うためのお役に立てれば幸いです。