「踏まえて」は日常生活でもよく見聞きするフレーズです。
かしこまった場面で使われるイメージの言葉ですが、実際はどのように使うのが適切なのでしょうか。
ここでは「踏まえて」の正しい意味や使い方をご紹介します。敬語や類語についてもご紹介しますので、是非参考にしてくださいね。
目次
「踏まえて」の読み方・意味
「踏まえて(ふまえて)」は動詞「踏まえる」を活用変化させた言葉で、動詞の連用形「踏まえ」に接続助詞「て」を付けたものです。
元の動詞「踏まえる」の意味は、「ある事を考慮に入れる。ある事を前提にして考えをすすめる」「判断のよりどころにする。根拠とする」です。したがって、「踏まえて」の形で用いる時は、「~を考慮に入れて」「~を根拠として」という意味になります。
踏まえる対象は名詞で表します。ビジネスシーンでよく使われるのは、結果・状況・現状・経験・反省などです。
「踏まえて」というフレーズはやや堅苦しい表現なので、日常会話で使うことはほとんどありません。ビジネスシーンや論文、報告書などフォーマルな文章で使うのが良いでしょう。なお、その際は「踏まえて」と漢字表記で差し支えありません。
「踏まえて」と「踏む」の違い
「踏まえて」は動詞「踏まえる」を活用変化させた言葉ですが、動詞「踏む」とは意味が異なります。例として、「手順」を目的語にして二つの言葉を見比べてみましょう。
「手順を踏まえて」の意味は「手順を考慮に入れて」です。一方の「手順を踏む」は、「踏む」の意味が「決まったやり方に従って行う」であることから、「手順に従って」となります。つまり、「手順を踏まえて」が手順を検討材料と捉えて実際にどうするかを判断するというニュアンスを持つのに対し、「手順を踏む」は手順をルールと捉えてその通りに進めるという解釈となります。このように「踏まえる」と「踏む」は意味が異なるため、混同しないように注意しましょう。
「踏まえて」の敬語
「踏まえて」の敬語は「踏まえまして」です。
「踏まえまして」は「踏まえて」に丁寧語「ます」を加えてできた丁寧語です。「ます」を加えることでより丁寧な言い回しになり、ビジネスシーンにふさわしい言葉遣いとなります。
ただし、人によっては「踏まえまして」という表現は丁寧さに欠けるという人もいます。その理由は「踏まえて」の意味にあります。
「踏まえて」の意味は「考慮に入れる」です。そのため、目上の人に対して「〇〇を踏まえてほしい」という文脈で使うと、人によっては「考慮に入れてほしい」と暗に指図されているように感じてしまうのです。
したがって、目上の人に対しては「踏まえて」というフレーズは避け、代わりに「○○をご考慮いただいた上で」「○○を根拠としていただき」といったフレーズを使いましょう。もちろん、自分に対して「踏まえて」「踏まえまして」を使うのは問題ありません。
「踏まえて」のビジネスでの使い方(例文つき)
ビジネスシーンにおける「踏まえて」の使い方を、例文と一緒にご紹介します。
「以上を踏まえて」「これらのことを踏まえて」
「踏まえて」を「以上を踏まえて」「これら(のこと)を踏まえて」という形で使うと、話を結論へと繋げることができます。
この場合、「以上を踏まえて」の前に、あらかじめ結論に至るための判断材料を提示しておかなければいけないことに注意しましょう。
「踏まえた上で」
「踏まえて」を「踏まえた上で」の形で用いることもあります。
「踏まえた上で」の意味は「考慮した結果」です。考慮を終えた後どういう行動をとるのかについて述べたい時に使いましょう。
「踏まえつつ」
「踏まえる」は「踏まえつつ」という形で使うこともできます。
「つつ」は、二つの動作・作用が同時に並行して行われることを表す言葉です。つまり、「踏まえつつ」の意味は、「考慮しながら」となり、考慮することと並行して何かしら行動をとることを示すことができます。
「踏まえて」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- 例年入社希望者数は500人程であり、そのうち女性は1/5程度です。これらを踏まえて、入社説明会では例年以上に育休や産休といった制度の紹介に努めるべきだと考えています。
- 今回の反省を踏まえて、もう一度デザインを見直しましょう。
- 以上を踏まえて、問題解決のための活発な議論をお願いします。
- 反対意見も踏まえた上で、あえてこのままの方針で進めたいと思います。
- 悪天候の日は来店するお客様が少なくなります。こうした状況を踏まえつつ、雨の日にこそ来店していただけるようなキャンペーンの発案をお願いします。
「踏まえて」の類語・言い換え表現
「踏まえて」の類語には、以下のようなものがあります。
【類語】
- 根拠として:物事が存在するための理由となるもの。
- 考慮して:物事を、いろいろの要素を含めてよく考えること。
- 前提として:ある物事が成り立つための、前置きとなる条件。
- 基(もと)づき:それが基となって起こる。起因する。また、それを根拠・基盤とする。
- 準(じゅん)じて:あるものを基準にしてそれにならうこと。
- 注意して:気をつけること。気をくばること。
- 意識して:物事や状態に気づくこと。はっきり知ること。また、気にかけること。
さいごに
ここまで「踏まえて」についてご説明してきましたが、いかがでしたか。
「踏まえて」の意味は「~を考慮に入れて」です。「踏まえまして」の形で丁寧語を作り、主に自分に対して使います。目上の人の中には考慮するよう指図されているように受け取る方もいるため、「踏まえて」のフレーズは使用を控えた方が良いでしょう。
「踏まえて」が適切に使えると、物事を順序立てて伝えやすくなります。スムーズに意思疎通を行うためにも、「踏まえて」が正しく使えるようになることを願っています。