「先立って」という言葉を見聞きしたことはあるでしょうか。
「先立って」は固い表現なので、日常生活ではなかなか触れる機会がありません。しかし、こうした固い表現は場を引き締めることができるため、ビジネスシーンでは頻繁に使われます。
ここではそんな「先立って」の正しい読みや意味、使い方をご紹介します。類語についてもまとめましたので、是非この機会に正しい使い方をマスターしてくださいね。
「先立って」の読み方
「先立って」の正しい読み方は「さきだって」です。
よくある読み間違いには「せんだって」があります。「先日」「先般」という熟語のように「先」は「せん」と読むこともできるため非常に間違えやすいですが、「先立って」は「さきだって」と読むので注意しましょう。
一般的に「さきだって」の漢字には「先立って」を使いますが、「先達て」という字を充てることもできます。「先立って」の読みは「さきだって」のみですが、「先達て」は「さきだって」「せんだって」のどちらでも読むことができます。また、「先達て(せんだって)」と読む場合は「前もって」という意味は持たず、意味は「さきごろ」のみとなります。
「先立って」の意味
「先立って(さきだって)」には二つの意味があります。一つ目の意味は「さきごろ。先日」、二つ目の意味は「他よりさきに出かけて。前もって」です。
そもそも「先立って」の由来は、動詞「先立つ」に助詞「て」がついた「さきだちて」が音変化してできた語です。元となった「先立つ」の意味は、「ある物事をするより以前に行われる。順序が先である」で、それを踏まえて「先立って」も「さきごろ」「他より先に」「前もって」という意味で用いられるようになりました。
それでは、2つの意味についてそれぞれ例文と一緒に見ていきましょう。
一つ目の意味「さきごろ」は、過去を表します。それほど遠い過去ではなく、「この間」「以前に」「さっき」といったニュアンスでごく最近の過去を指します。
「さきごろ」という意味で「先立って」を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- 先立ってご指摘いただいた件について、資料にまとめて参りました。
- 先立ってお会いした際は、大変お世話になりました。
- 先立っては貴重なご意見をありがとうございました。
二つ目の意味「前もって」は、順序に着目して使います。「事前に」「あらかじめ」「兼ねて」といったニュアンスで、「何か物事が起こるより前」を指します。
「前もって」という意味で「先立って」を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- 会議に先立って、配布資料を作成する。
- 先立ってお伝えしました通り、来週はお休みをいただく予定です。
- 試験に先立って、持ち物の確認を念入りにする。
「先立って」の使い方(例文つき)
「先立って」は固い表現なので、かしこまった場面で使うのに適しています。敬語表現と組み合わせて使うことでとても丁寧な言い回しとなるため、ビジネスシーンを始め、司会や手紙といった場面で重宝するフレーズです。
ビジネスシーンでは、「先立ってご依頼した件ですが」といった使い方で「先立って」をよく使います。また、司会者が「開演に先立って、ご来場の皆様にお願い申し上げます」と言うのを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。これらは「先立って」を使うことで「先日ご依頼した件」「開演する前に」という意味を表しています。
手紙では「先立ってはありがとうございました」といった言い回しで、過去の出来事に対する感謝の気持ちを表現することが可能です。「先立って」は固い表現なので、目上の人や取引先に宛てた手紙にふさわしいフレーズと言えます。しかしながら、「先立って」自体は敬語表現ではないため、目上の人に用いる時は、丁寧語の「ます」を加えて「先立ちまして」という敬語表現を使いましょう。手紙冒頭の挨拶文に「先立ちまして」を含めることで、手紙全体の印象を引き締めることができます。
ちなみに、「先立って」を使ったフレーズには「先立ってより」というものもあります。
「より」は動作・作用の起点を表す語なので、「先立ってより」で「以前から」「先日から」といった意味を表します。「先立ってより」は一般的にはあまり使われない表現です。相手にとって馴染みが薄い表現かもしれないので、ビジネスシーンでは避けた方が賢明でしょう。
「先立って」の例文は、以下の通りです。
【例文】
- 先立ってご連絡した件ですが、その後いかがでしょうか。
- サービスの本格的な公開に先立ちまして、ベータ版をリリースいたします。
- 先立ってはお忙しい中ありがとうございました。
「先立って」の類語・言い換え表現
「さきごろ」という意味での「先立って」には、以下のような類語があります。
【類語】
- 先日(せんじつ):近い過去のある日。このあいだ。過日。
- さきごろ:今日から少し前のころ。このあいだ。
また、「前もって」という意味での「先立って」には、以下のような類語があります。
【類語】
- 先に:今よりも前に。以前に。
- 先んじて(さきんじて):先に何かをする。
- 先駆けて(さきがけて):他に先んじて事をする。
「先立って」には2つの意味があるため、場合によっては上に挙げたような類語に言い換えると、より正確に自分の意図を伝えることができます。相手や状況によって、「先立って」と類語を使い分けてみてください。
「先立って」を使った慣用句
「先立って」には、以下のような慣用句があります。
【慣用句】
- 先立って来(さきだってらい):さきほどから
- 先立って中(さきだってじゅう):この間ずっと
さいごに
ここまで「先立って」の使い方についてご説明してきましたが、いかがでしたか?
「先立って(さきだって)」には「先日」と「前もって」の2つの意味がありました。ビジネスシーンを始め、手紙や司会といったかしこまった場で使うことが多い表現で、目上の人に対して使う場合は「先立ちまして」という敬語表現にする必要があります。
「先立って」を適切に使うことで、相手に「かしこまった場である」という雰囲気を伝えることができます。その場をぐっと引き締めることができ表現なので、是非積極的に活用してみてくださいね。
「先立って」を使ってビジネスシーンにメリハリがつけられるよう、このページがお役に立てれば幸いです。