ビジネスシーンにおいて、「いらっしゃいますか」はよく使われる言葉です。
電話やメールでお使いの方も多いのではないでしょうか。敬語として社外の人相手によく使うフレーズなので、誤用には気を付けたいところです。
ここでは、「いらっしゃいますか」の意味や使い方をご紹介します。
ぜひこの機会に正しい使い方をマスターしてくださいね。
「いらっしゃいますか」の意味
「いらっしゃいますか」の意味は、「いますか」です。
「いらっしゃいますか」の成り立ちは、フレーズを分解するとわかりやすくなります。
- いらっしゃる :「行く」「来る」「居る」の尊敬語
- ます:丁寧の助動詞
- か:疑問の助動詞
つまり、「いらっしゃいますか」は相手への敬意を込めて「行く」「来る」「居る」を丁寧に訊ねる、尊敬語のフレーズとなります。
「いらっしゃいますか」の電話・メールでの使い方(例文つき)
「いらっしゃいますか」は「いらっしゃる」という尊敬語を含むため、目上の人に使うフレーズです。同僚や目下の人、また社内の人に向けては、ややカジュアルな丁寧語の「いますか」を使うのがふさわしいです。
「いらっしゃいますか」と同様の場面で使われるフレーズのひとつに、「おられますか」があります。「おる」には多様なニュアンスがあるため、このフレーズの使い方には注意が必要です。
「おる」本来の意味は「人が存在する。そこにいる」です。「おられる」「おられます」の形では、尊敬語として用います。ビジネスシーンでは、「おる」を「〇〇におります」の形で用いることも多く、これは自分についての「居る」を丁寧に述べる謙譲語(丁重語)です。他にも「おる」には「そこにおれ」「おらんようになった」などの使い方があり、古風もしくは尊大で、方言的な響きを帯びた言葉という面もあります。
以上のことから、「おる」は謙譲語として使うことがある、ビジネスシーンで使うには不向きなニュアンスを持つといった理由で、相手の状況について「おる」を使うことに違和感を覚える方もいます。「居ますか」の敬語表現として「おられますか」を使うのは避けた方が無難です。
他にも、「いらっしゃいますでしょうか」というフレーズがありますが、こちらは誤った敬語表現です。「いらっしゃいますでしょうか」には、丁寧の助動詞「ます」と「です」が含まれています。つまり、同じ種類の敬語が複数使われている二重敬語です。敬語は過度に重ねないようにしましょう。
それでは、電話とメールそれぞれの「いらっしゃいますか」の使い方をみていきます。
電話の場合
電話で「いらっしゃいますか」を用いる場面は、大きく2つあります。相手を呼び出してもらう時と、電話口の相手が本人かどうか確認する時です。
電話口で担当者に取り次いでもらう際は、「〇〇様はいらっしゃいますか」と言います。また、電話口に出た相手が本人かどうか確認したいなら、「〇〇様でいらっしゃいますか」とします。
電話での「いらっしゃいますか」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- お忙しいところ申し訳ございません。私A社の佐藤ですが、吉田様はいらっしゃいますか。
- お待たせいたしました。お電話変わりました、佐藤です。吉田様でいらっしゃいますか。
- いつもお世話になっております、A社の佐藤です。吉田様のご家族の方でいらっしゃいますか。
メールの場合
メールでは宛先の誤りがほぼないため、電話のように相手を確認する必要はありません。そこで、メールでは主に「いらっしゃいますか」を相手の行動について尋ねる際に用います。
「いらっしゃいますか」を使うと、相手に「どのような予定で来るのか」「どのような予定で行くのか」といった交通手段や人数等の詳細を丁寧に問うことができます。
メールでの「いらっしゃいますか」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- 明日は何時頃いらっしゃいますか。駅から弊社までの道順が複雑なため、駅までお迎えに参ります。
- 当日は混雑が予想されるため、事前にお席を人数分ご用意させていただきます。何名様でいらっしゃいますか。
- 来月の視察ではどちらへいらっしゃいますか。
「いらっしゃいますか」の返答
自分が「いらっしゃいますか」と問われた際の正しい返答は、「おります」「おりません」です。自分が「居る」ことを伝える際は、「居る」の謙譲語「おる」を使います。
それでは、もし社外の人から自分の上司について問われたら、どのように答えるのが正しいのでしょうか。この場合も、「おります」「おりません」と答えるのが適切です。自分にとっては目上の人でも、社外の人にとっては自分側の人間です。身内について、尊敬語「いらっしゃいます」と答えないように気を付けましょう。
「いらっしゃいますか」の類語・言い換え表現
「いらっしゃいますか」の言い換え表現には、以下のようなものがあります。
【言い換え表現】
- 来られますか(こられますか):「来ますか」を尊敬語にした言い回しです。
- お見えですか:「お見え」は「来ること」の尊敬語です。「お見えになりますか」とも使います。
- お越しになりますか:「お越しになる」は「行くこと」「来ること」の尊敬語です。
- おいでになりますか:「おいでになる」は「行くこと」「来ること」「居ること」の尊敬語ですが、ビジネスシーンでは主に「来ること」の意で使います。
上に挙げた尊敬語の言い換え表現を用いる際は、「お見えになられますか」「お越しになられますか」といった二重敬語にならないよう注意しましょう。
さいごに
ここまで「いらっしゃいますか」についてご説明してきましたが、いかがでしたか。
「いらっしゃいますか」は、目上の人に対して「行く」「来る」「居る」について尋ねる尊敬語のフレーズです。もし自分もしくは自分側の人間について「いらっしゃいますか」と尋ねられた時は、「おります」と答えます。社長や会長など、どんなに地位の高い人について尋ねられても、身内として尊敬表現は使わないようにしましょう。
ビジネスシーンでは、相手の予定を確認する場面が多々あります。そんなときに「いらっしゃいますか」を使うことで、予定を尋ねるだけでなく相手への敬意も示すことができます。
敬語表現は丁寧にしようとするあまり過剰に敬語を重ねてしまいがちです。この記事を通じて、適切な敬語が使えるよう応援しています。