「わかる」を漢字で書くと「分かる」「解る」「判る」の3つが出てきます。
あなたは「分かる」「解る」「判る」の違いをご存知ですか?
同じ「わかる」でも、使う漢字が変わると、意味や使い方にも違いが出てきます。
ここでは「分かる」「解る」「判る」の違いや使い分け方についてご紹介します。それぞれの意味や使い方・類語はもちろん、「理解する」との違いについてもお伝えするので参考にしてくださいね。
「分かる・解る・判る」の違い
「分かる」「解る」「判る」の違いについて、さきに結論をお伝えすると下記の使い分けになります。
- 3つの言葉のなかで常用漢字なのは「分かる」だけ。「解る」「判る」は表外漢字。そのため、公用文書やビジネス文書などでは基本的に「分かる」を使う。
- 私的なメールや手紙で使い分けをするとき、「分かる」は「物事の道筋や事情がはっきりしたとき」、「解る」は「物事の価値や理論がはっきりしたとき」、「判る」は「事実が明らかになったとき・真相が把握できたとき」に使う。
「分かる」は「わかる」を使う場面で幅広く使用することができ、「解る」と「判る」は限定的な意味を持つことがわかりますね。
次節では「分かる」「解る」「判る」のそれぞれの意味や使い方をご紹介しています。確認しておいてくださいね。
「分かる」の意味や使い方
「分かる」の意味は「意味や区別などがはっきりする。理解する。了解する」です。
「分かる」の「分」の漢字は「見わける。物事の程度や状態。全体からわかれた一部」という意味があります。「分別」や「分解」といった熟語でも使われるとおり、頭の中ですっきりせずにいたことがきちんと整理され、はっきりとしたときに「分かる」を使います。
そのため「分かる」は、物事への理解や把握をして、道筋をはっきりと捉えること・理解することを表した言葉です。
また物事の理解に限らず、相手の気持ちを察するときに「話が分かる」「冗談が分かる」「気持ちが分かる」という使い方もします。
なお、「分かる」は常用漢字なので、法令や公用文書・新聞・雑誌などで「わかる」と書くときは「分かる」と書くのが基本です。
【例文】
- 彼は話の分かる人だ。
- 長年の経験から味の違いが分かるようになった。
- 父の消息が分かる。
- 同じ経験をした立場のわたしには、彼女の気持ちが痛いほど分かる。
- プロであれば、ひと目見ただけで分かるだろう。
- 物分かりの良い人を演じる。
- パソコンの使い方が分からないので教えてもらう。
- メールを受信できない理由が分かる。
- あなたが怒る気持ちは、よく分かる。
「解る」の意味・使い方
「解る」の意味は「物事の価値や意味が理解できること」です。「分かる」と似ていますね。
「解」という漢字は「理解」「解決」「解釈」といった言葉でも使われるとおり、「意味を解き明かすこと。解釈。また、その説明」という意味があります。
つまり、「解る」は、物事の理論や価値が理解できるようになったり、問題の答えが解けたりしたときに使われます。
「意味が解る」「問題が解る」「授業が解る」「日本語が解る」などの使い方をします。
なお、「解る」は表外漢字のため、公用文書や新聞などで使われることはありません。私的な手紙や小説などで、言葉そのものに細かな意味を込めるときに使用されます。
【例文】
- 彼が説明してくれると、よく解る。
- 今年の試験問題は難しくて、解らない問題が多かった。
- 有名講師のAさんは解りやすい説明をしてくれるので生徒からの人気が高い。
- 言葉の意味が解る。
- 英会話スクールに通っているおかげで、海外からのメールの内容も解るようになった。
- いつの間には絵画の良さが解るようになった。
「判る」の意味・使い方
「判る」の意味は「事実などがはっきりする。判明する」です。
「判」という字は「判定」「判明」「判断」などの漢字でもお馴染みですが、「物事の優劣・可否などを見分け定めること。判定」という意味があります。
「良し悪しが判る」「是非が判る」「善悪が判る」「性別が判る」といった使い方ですね。
また、判断がつかなかったものを見分けられたときに「違いが判る」「真相が判る」「犯人が判る」といった使い方をします。
つまり「判る」とは、事実が明らかになったとき・真相が把握できたときに使われる表現ですね。
【例文】
- 技術の進歩により、一本の髪の毛から犯人が判る時代になった。
- 善悪が判る人なら、どんなことがあっても罪を犯したりはしない。
- 事実確認をすれば、すぐに嘘だと判る。
- 証拠から犯人は女だと判った。
- 調査によって新製品の欠陥が判る。
「分かる」と「理解する」の違いは?
「分かる」と「理解する」にはどのような違いがあるのでしょうか。まずは、「理解する」の意味を見てみましょう。
物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。
他人の気持ちや立場を察すること。
「分かる」と「理解する」のどちらの言葉にも「意味や筋道がはっきりする」「人の気持ちを察する」という意味が含まれていますね。
しかし、「人の気持ちを察する」という意味に関しては、「分かる」と「理解する」ではニュアンスが少し違ってきます。
結論をお伝えすると、「分かる」には「意味・内容を飲み込む」と「共感する」の2つの意味合いがあるのに対し、「理解する」は「意味・内容を飲み込む」というニュアンスが強く表れた言葉となります。
それでは、例文で詳しく見ていきます。
- プレッシャーに押しつぶされた彼が、逃げ出した気持ちが分かる。
- プレッシャーに押しつぶされた彼が、逃げ出した気持ちが理解できる。
上の「分かる」の例文では、「彼の気持ちを頭で理解した上で、共感できる」という意味合いになりますが、「理解できる」の例文は「彼の気持ちを頭で理解できる」という意味合いになります。
そのため、落ち込んでいる人を励ますような場面が訪れたときは、「あなたの気持ち、理解できるよ」ではなく「あなたの気持ち、分かるよ」と伝えた方が、より相手の気持ちに寄り添っている印象になりますね。
覚えておいてくださいね。
「分かる・解る・判る」の類語・言い換え表現
「分かる」「解る」「判る」にはどのような類語や言い換え表現があるのでしょうか。次節で紹介します。
- 分かる:(意味や筋道を)飲み込む・理解・納得・読解・読み取る・解せる・認識・知っている・判明・判別・区別・共感・同感
- 解る:(意味や筋道を)飲み込む・理解・納得・読解・読み取る・解せる・認識・知っている
- 判る:判明・判別・区別
「読解」は、文章を理解できた場合のみ使います。
また「解せる」は、通常「解せない」と否定形で使い、「理解できない・納得できない」ことを表すときに使用する言葉です。
さいごに
ここでは「分かる」「解る」「判る」の同音異義語について、違いやそれぞれの意味・使い方についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。
それぞれの漢字が持つ意味や使い分け方はマスターできましたか?
類語を参考にすると、使えるシチュエーションの違いも明確になりますね。また「分かる」は常用漢字ですが、「解る」「判る」に関しては常用漢字表外の読みとなるため、公的な場面で使うことが相応しくない場合もあることを覚えておきましょう。
意味を明確に漢字で表したいときは3つの「わかる」を上手に使い分け、迷った時はとりあえず「分かる」を使っておく、という方法もありますよ。
この機会にしっかり覚えておいてくださいね。