- 取り急ぎお礼まで。
- 取り急ぎご連絡まで。
- 取り急ぎご報告まで。
上記のような使い方で、手紙や文書・ビジネスメールの最後に「取り急ぎ」という表現を目にすることがあります。
あなたは「取り急ぎ」の意味や正しい使い方をご存知ですか?
ビジネスシーンでも使える便利な言葉ですが、意味が曖昧なまま使ってしまうと、相手に失礼な印象を与えることもあるので注意しなくてはなりません。
ここでは「取り急ぎ」の意味や使い方をご説明します。お礼や報告・連絡時のビジネスメールの例文や、類語・言い換え表現についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
目次
「取り急ぎ」の意味・使い方
まずは「取り急ぎ」の辞書的な意味から確認しましょう。
「取り急ぎ」とは「とりあえず急いで。間に合わせの処置として。まず差し当たって」という意味です。
「十分な準備や対応ができていない状態だけど、急いで分かる範囲で現状を伝えます」「間に合わせの処置として」というニュアンスを含んだ表現です。
「取り急ぎ」は、ビジネスメールでやりとりをするとき、結びの挨拶としても使える表現ですが、基本的には至急の連絡が必要な場合のみ使用します。
例えば、打ち合わせの日程変更を伝えるメールで「取り急ぎご案内まで」と締めくくったり、取引先に送付依頼をした資料が手元に届いたときに、到着の報告メールで末尾に「取り急ぎご報告まで」と使ったりします。
詳しい内容確認や正式な準備は後回しにしてでも、とりあえず相手に連絡をしておきたいとき、また連絡をしてもよいときに使う表現です。
以下に例文をご紹介します。
【例文】
- 〇月〇日の営業会議は延期となりましたので取り急ぎご連絡いたします。
- 本日の商談で、新規契約を取り付けることができました。取り急ぎご報告申し上げます。
- 次回の会合には出席予定でおります。取り急ぎご連絡まで。
- 〇〇部長離席の間に、株式会社△△の△△様からお電話がありましたので取り急ぎご連絡申し上げます。
「取り急ぎ」を使うときの注意点
前章では「取り急ぎ」の意味や使い方をご説明しました。
前述のとおり「取り急ぎ」はどのような場面でも使えるフレーズではありません。状況や相手との関係性を念頭に置いて使うのが基本です。以下の4つの注意点を押さえておきましょう。
1:あとで連絡を取ることが前提
「取り急ぎ」とは「十分な準備や対応ができていないけど、急いで分かる範囲で現状を伝えます」という意味です。そのため「取り急ぎ」は、あとでしっかり連絡を取ることが前提となります。
「取り急ぎ」連絡をしているのですから、そのメールや文書で完結させるときには使いません。
2:目上の人には別の表現に言い換えるのが好ましい
「取り急ぎ」には「とりあえず急いで。間に合わせの処置として。まず差し当たって」という意味があります。
急ぎの状況を理解してもらいやすい直属の上司や親しい間柄の先輩には使っても問題ありませんが、社外の取引先やお客様、あまり認識のない上司や先輩に対して使うのは失礼にあたる場合もあります。
急ぎで何かを伝えたいときは「取り急ぎ」を丁寧に言い換えた下記の表現を使用しましょう。
「まずは〇〇申し上げます・のみにて失礼いたします」
「取り急ぎ」は「まずは」に言い換えることでフォーマルな印象になります。
また「〇〇まで」の言い切り方は略式です。目上の人に宛てる文章を省略して書くのは失礼です。語尾は最後まで丁寧に書くようにしましょう。
【例文】
- まずはご連絡申し上げます。
- まずはご報告申し上げます。
- まずはご案内申し上げます。
- まずは用件のみにて失礼いたします。
- まずはご報告のみにて失礼いたします。
「取り急ぎお礼まで」はNG
「取り急ぎお礼まで」の表現は目上の人に使ってはいけません。
感謝の気持ちは、本来しっかりと伝えるべきものです。御礼と「取り急ぎ」の意味が一致しないため使用は避けるのが基本です。
お礼の気持ちを伝えるときは「取り急ぎ」を「まずは」に言い換え、語尾を丁寧にし、一言気持ちを添えた敬語表現を書くようにします。
【例文】
- まずはお礼申し上げます。
- まずは御礼かたがたご挨拶申し上げます。
- まずはお礼のみで失礼いたしますが、後日ご挨拶にお伺いしたいと存じます。
3:その他の連絡事項は入れない
「取り急ぎ」を使うときは、急ぎで伝えたい用件のみを書き、そのほかの連絡事項は入れないのが基本です。
どうしても追記したい用件があるときは、以下のような書き方をし、追って連絡する旨を伝えましょう。
【例文】
- お送りいただいたメールを拝受いたしました。お忙しいところありがとうございます。取り急ぎご連絡申し上げます。
- また、別件ですが、〇〇の会議日程につきましては追ってご連絡をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
4:相手に「取り急ぎ」を求めるのは非常識
「取り急ぎ」は、自分の行為を相手に伝えるときの表現として使うのが基本です。
相手に何かをお願いするときに「取り急ぎお返事ください」「取り急ぎご回答いただけますでしょうか」といった使い方をするのは失礼にあたります。
「一刻も早く結論を出してください」と急かす表現になってしまうので使わないように注意しましょう。
「取り急ぎ」メールの例文集
つづいては「取り急ぎ」を使ったメールや、別の表現に言い換えたビジネスメールの例文をご紹介します。
「取り急ぎご連絡まで」を使ったメール
件名:カタログ到着のご連絡 本社総務部 〇〇課長 お疲れ様です。△△支店、営業部の△△です。 ご送付いただいた来年度のカタログが お忙しい中、迅速にご対応いただき 取り急ぎカタログ受け取りのご連絡まで。 ==================== |
「取り急ぎご報告申し上げます」を使ったメール
件名:面談結果のご報告 〇〇課長 お疲れ様です。営業部の△△です。 先ほどお電話を差し上げましたが 株式会社〇〇様との面談結果について 来週月曜日に役員会議があり、 結論については来週火曜にお返事いただきます。 社に戻り次第、商談内容をご報告いたしますので ==================== |
「取り急ぎお詫び申し上げます」を使ったメール
件名:スタッフの対応についてのお詫び 株式会社〇〇〇〇 この度は弊社サービスをご利用いただき、 またお忙しい中、ご足労いただいたにも関わらず、 明日にでも店舗に向かい、状況確認と現場指導を行います。 二度とこのような事が起きないよう〇〇様のご指摘を真摯に受け止め、 またご迷惑でなければ、ご自宅にお伺いし、 メールにて恐縮ではございますが、 ==================== |
「取り急ぎお詫び申し上げます」は、お客様からのクレームに対してメールで謝罪するときによく使われる結びの挨拶です。社外の人やお客様には「取り急ぎお詫びまで」の省略形を使わないよう注意しましょう。
その他の謝罪やお詫びメールの全文を確認したい方は「謝罪メールの文例集」をご覧ください。
「取り急ぎお礼まで」を言い換えた感謝メール
「取り急ぎお礼まで」を「まずはお礼申し上げます」に言い換えたメール例文です。
件名:お土産のお礼 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 本日はご多用中にもかかわらず 〇〇様のお心遣いに感謝申し上げます。 お土産の和菓子は、社内のスタッフで美味しくいただきました。 特に、同僚の女子社員に好評で、 いつも細やかなお気遣いをいただいておりますうえに、 また、お時間ございますときに 社員一同を代表してまずはお礼申し上げます。 ==================== |
その他の状況でのお礼メールの書き方や例文を確認したい方は「お礼メールの例文集」をご覧ください。
「取り急ぎ受け取りました」を丁寧に言い換えたメール
取り急ぎ受け取ったことを伝えるときは「拝受しました」「受領しました」「受け取りました」という表現を使うのが一般的です。
件名:資料ご送付のお礼 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 この度は企画書をご送付いただき、 本日受領しましたので取り急ぎご報告申し上げます。 確認させていただき、またご連絡致しますので ==================== |
「取り急ぎ」メールに返信する必要はある?
末尾に「取り急ぎ〇〇まで」が書かれたメールに返信する必要性はあるのでしょうか。
多くの場合、「返信は不要です」という意味合いが含まれているので、基本的には不要です。しかし、「取り急ぎ〇〇まで」のメールの送り主が目上の人の場合、一言添える程度で構いませんので、返信した方が丁寧といえます。
たとえば、クライアントからメールを受け取った報告をもらったときは、以下のようなメールを送りましょう。
件名:Re:資料ご送付のお礼 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 お忙しいなか、ご丁寧にご連絡をいただき ご査収くださいますようお願い申し上げます。 ==================== |
なお、あなたが送るメールの文面に「返信不要」であることを伝えたいときは『「返信不要」は失礼?上司・目上への丁寧な言い方(メール例文つき)』をご覧ください。
さいごに
ここでは「取り急ぎ」の意味や使い方をお伝えしましたが、いかがでしょうか。
クライアントやお客様といった目上の人には「まずはご連絡申し上げます」などの丁寧な言い回しを使うのが適切です。
なお、「取り急ぎ〇〇まで」は、ビジネスシーンで使える便利な表現ですが、状況に合う場面での使用を心がけましょう。
ご紹介したビジネスメールの例文も参考にして使ってみてくださいね。