突然ですが、「上る・登る・昇る」の違いをご存知ですか?
どの漢字も読み方は「のぼる」ですね。
これらの漢字は小学生のときに国語の授業で習いましたが、時間の経過とともに、どの状況でどの漢字を使うのが正しいのか、曖昧になってしまっている方も少なくありません。
「階段をのぼる」や「坂道をのぼる」「山をのぼる」「太陽がのぼる」と書くときに、「上る・登る・昇る」のどの漢字を用いるのかはっきり答えられますか。
ここでは「上る」「登る」「昇る」の違いについてご説明します。それぞれの意味や使い方、「のぼる」と「あがる」の使い分け方についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
「上る」「登る」「昇る」の違い
「上る」「登る」「昇る」にはどのような違いがあるのでしょうか。
まずは、それぞれの言葉を使うときの簡単なイメージからお伝えします。
- 登る:労力を費やし、踏ん張って高い所に進むとき
- 昇る:自然と高いところへ進んでいくとき
- 上る:「登る・昇る」の使い方以外
3つの言葉の使い分けを理解するには、まずは「登る」の意味や使い方から覚えると楽です。次に「昇る」の使い方、最後に最も使う場面が多い「上る」の順番です。
では「登る」の意味や使い方からご説明します。
「登る」の意味・使い方
「登る」の意味は「意図的に上の方へ移動する。他より一段と高い所へ移り進む」です。
「登」の漢字には「高い所に上がる」や「ある場所に進み出る」という意味があり、「山を登る(登山)」や「頂上まで登る(登頂)」といった熟語でも使われます。
また、「他より一段と高い所へ移り進む」という意味で「演壇に登る(登壇)」や「マウンドに登る(登板)」といった使い方もします。
簡単に言えば「登る」は、労力を費やし、踏ん張って高い所に進むときに使われる語です。
【例文】
- 7回裏でマウンドに登る。
- 壇上に登った瞬間に頭が真っ白になってしまった。
- 梯子を登る。
- 急な崖を登っていく。
- 大きな木によじ登る。
「昇る」の意味・使い方
「昇る」を辞書で調べると、下記の4つの意味が出てきます。
1:太陽・月などが空に高く現れる。
- 日が昇る。
- 朝日が昇る。
2:煙などが上の方へ移動する。
- 煙突から煙が昇る。
- 天にも昇る心地。
- 気球で2000メートルの高さまで昇る。
3:人が結果として高い地位につく。出世する。昇進する。
- 地位が昇る。
- 高い位に昇る。
- 左大臣の位まで昇る。
4:上方へすすんで高い所に達する。
- エレベーターで昇る。
- エスカレーターで昇る。
- 飛行機が昇る。
「昇」の漢字は「昇降」「昇天」「昇竜」「上昇」といった熟語でも使われるとおり「上にあがって行く」という意味や、「昇格」「昇給」「昇級」の「上の官位・等級に進む」という意味があります。
簡単に言うと「昇る」は、自然と高いところへ進んでいくときや、機械を使ってあがるときに使われます。
「上る」の意味・使い方
「上る」の言葉を辞書で調べると、下記の7つの意味が出てきます。例文とともに確認していきましょう。
1:下から上へ、低い所から高い所へ移る。
- 階段を上る。
- 鮭が川を上る。
- 屋根に上る。
- 坂道を上る。
2:地方から中央へ行く。都へ向かう。上洛する。
- 都に上る。
- 上りの新幹線に乗る。
- 上り列車に乗る。
3:貴人の御座所近くへ参上する。
- 宮中に上る。
4:興奮する。のぼせる。夢中になる。逆上する。
- 頭に血が上る。
5:数量が無視できない相当の程度に達する。結果として大きな値になる。
- 来場者は10万人に上る。
- 損害が1億円に上る。
6:話題や議題として人々に取り上げられて表(公の場)に出る。
- 来春の選挙戦のことが話題に上る。
- 地震のことが話題に上る。
- 規約改正が議題に上る。
- 昨日感じた不安が今日も意識に上ってくる。
7:用意されて食べ物として供される。
- 山の幸が食卓に上る。
- 松茸が食膳に上る。
また「登る」の「意図的に上の方へ移動する」という意味や、「昇る」の「太陽・月などが空に高く現れる」「煙などが上の方へ移動する」という意味で使うときも「上る」と書いても間違いにはなりません。
「上る」は「のぼる」と書くときに、さまざまな場面で広く一般的に使われ、汎用性が高いことから、混同してしまいがちです。
なので、先にも述べた通り、「登る」「昇る」の意味や使い方を覚え、それ以外の場面で「上る」を使うと理解しておきましょう。
「上る(のぼる)」と「上がる(あがる)」の使い分け方は?
「上る」と似た言葉に「上がる」がと言う言葉があります。読み方は「あがる」ですね。
漢字も同じでよく似た言葉ですが、「上る」と「上がる」は意味に細かな違いがあるので覚えておきましょう。
結論をお伝えすると、「上る」は下方から上方へ移動する“過程”を指す語であるのに対し、「上がる」は下方から上方へ移動した“結果(到着点)”を意味しているという違いがあります。
たとえば、「台に上る(のぼる)」という文章は「低い所から高い所(台)に移動する過程」を強調しているのに対し、「台に上がる(あがる)」は「台の上にあがったという結果」を強調している文章になります。
また、「上がる」は他動詞でも言い表すことができますが、「上る」はできません。
「花火が上がる」は他動詞で「花火を上げる」と書くことはできますが、「日が上る」は「日を上らせる」とは言いません。
さいごに
ここでは「上る」「登る」「昇る」の違いや、それぞれの意味や使い方についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。
どの言葉にも下から上に移動するという意味合いが含まれるため、使い分けを難しく感じるかもしれません。
そのようなときは「上」「登」「昇」が使われる熟語をイメージして考えると、答えが見つかりやすくなるでしょう。
また、このような使い分けを特に意識しない場合は一般的に使われる「上る」か、ひらがなで「のぼる」と書いておけば間違いではありません。