突然ですが、「超える」と「越える」の違いをご存知ですか?
「超える」「越える」はどちらも同じ読み方のうえ、部首も同じのため意味や使い分けが曖昧になっている方も少なくありません。
「超える」と「越える」のどちらの漢字を使うべきなのか、迷ってしまう場面も多々ありますよね。
ここでは「超える」と「越える」のそれぞれの意味や違い、正しい使い分け方をご説明するので参考にしてくださいね。
「超える」の意味・使い方
まずは「超える」の意味からお伝えします。意味を辞書で調べると下記のとおりです。
- ある基準・数量を上回る。超過する。
- 他のものよりすぐれる。ぬきんでる。
- ある考えや主義にとらわれず先に進む。また、ある基準・範囲の外まで出る。超越する。
- 地位・段階などで順番をとばして先になる。飛びこす。
上記の意味から「超える」は、「基準・数量・範囲・限度を上回るとき」と「地位・段階を跳びこすとき」の主に2つの状況で使われる語だと分かります。
「基準・数量・範囲を上回る」という意味での使い方に迷ったら、「数値」に対して使うと覚えておくとよいでしょう。
「一万人を超える観衆」「危険水位を超える」「時速100㎞を超える」などと使い、いずれも数値を超えたことを表しています。
また、「地位・段階を跳びこす」という意味では「上司を超えて部長になる」「先輩を超えてレギュラーになる」などと使います。
ちなみに、「超える」は基準となる数量を含みません。
「1万人を超える観衆」は、1万人よりも観衆が多いことを表しています。一方で「1万円以上」という表記は、1万円を含むことを意味します。
「越える」の意味・使い方
「越える」の意味は下記の通りです。
- 物の上・間・境界などを通り過ぎて向こうへ行く。
- 区切りとなる日時が過ぎる。時を経過する。
「物の上・間・境界などを通り過ぎる」という意味での使い方は、物理的に何かが境界や物を通り過ぎて先に行くときです。たとえば、「国境を越える」「峠を越える」などです。
一方で、「区切りとなる日時が過ぎる」という意味では、「冬を越える」「提出期日を越える」といった使い方をします。
「超える」と「越える」の違い
「超える」と「越える」の違いは主に2点あります。
まず一つ目の違いは、「超える」は数量や基準を上回るとき、「越える」は地点や時をこえるときに使うという点です。
「超える」は「テストで平均点を超える」「社員数が100人を超える」などと、ある基準の数値を上回るときに使います。
また「超」の漢字は、数字のあとについて「一万円超」といったり、「超高層ビル」「超満員」などと名詞についたりして、ある数値を超える意を表すときにも使われます。
一方で「越える」は、「山を越える」「年越し」などと使うとおり、地点や季節などをこえるときに使います。
二つ目の違いは、「どこに向かってこえるか」という点です。
「超える」は「上回る・上を行く」ことを表すのに対し、「越える」は「向こう側やその先へ行く」ときに用いる言葉です。
例を挙げると、「上司の役職を超える」は上司よりも職位が上になることを表しているのに対し、「ボールが頭上を越える」はボールが物理的に頭の上を通り越すことを表していますね。
「超える」と「越える」のどちらを使うか迷ったときは頭の中でイメージしてみるとよいでしょう。
「超える」と「越える」の使い分け
つづいては「超える」と「越える」の使い分け方について、例文を紹介します。
「超える」の例文
- 甲子園の来場者数が4万人を超える。
- ボーナス支給額が50万円を超える。
- 弛まぬ努力により世界記録を超える。
- 彼の記憶力のよさは、普通の能力を超えている。
- 気温が35度を超える。
- 書類の提出期限を超える。
- 当初予定していた金額を超える。
- 前期の販売件数を超える。
- 教授は父の年齢を超える。
- 親の身長を超える。
- 先輩の能力を超える。
- 年齢制限を超える。
- 想像を超える出来事だった。
- 募集定員を大幅に超える。
- 先月の売上目標を超える。
- レベルを超える。
- ピークを超える。
年齢は数量のため、基本は「20歳を超える」と書きますが、「50の坂をこえる」と表現するときは、50歳という時期を峠にたとえた表現なので「50の坂を越える」と書きます。
「越える」の例文
- 山を越えて、隣の集落まで歩いていく。
- 境界線を越えて隣の陣地に踏み込む。
- 厳しい冬を越えて春がやってくる。
- 年越しを家族みんなで祖母の家で過ごす。
- 障害を乗り越えて精力的に活動している。
- 人員の募集期間を越える。
- 一線を越える。
- 停止線を越えると危険だ。
- 度を越える。
「権限をこえる」は、意味に従うと「立場を上回る権利の範囲」のため、「権限を超える」と書きそうですが、「越権」という熟語があるように「権利の境界線を通り過ぎる」という意味から「権限を越える」が正しい使い方です。
さいごに
「超える」と「越える」の意味や使い方、違いについて詳しくお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
「超える」と「越える」は同じ読み方をする同音異義語ですが、何を「こえる」かによってどちらの漢字を使うのが適切か、かわってきます。
「超える」と「越える」は日常でもよく使う言葉ですから、それぞれの使い分け方をこの機会に覚えておいてくださいね。