「表す・現す・顕す・著す」の違い|意味・使い分け方(例文つき)

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「表す・現す・顕す・著す」の違い|意味・使い分け方(例文つき)

日本語には、読み方や字の響きが似た漢字がたくさんあります。

いざ漢字で書こうとしても、どの漢字を充てるべきか、悩むこともしばしば。例えば「あらわす」という漢字には「表す」「現す」「顕す」「著す」などがありますが、あなたは正しく使い分けをできていますか?

ここでは「表す」「現す」「顕す」「著す」の意味や違い、使い分け方を詳しくご説明します。例文もあわせてお伝えするので参考にしてくださいね。

「表す」現す」顕す」著す」の意味・使い方

まずは「表す」「現す」「顕す」「著す」のそれぞれの意味や使い方をご説明します。

「表す」の意味・使い方

「表す」の意味は下記の3つです。

  • 1:感情などを表情や外見から読みとれるようにする。
  • 2:人が、考え・感情などを言葉・絵・音楽によって相手に示す。
  • 3:記号や色がある意味を示す。

「表す」の「表」の漢字は、「表現する」「表示する」「表明する」といった使われ方をするように、目に見えない内面の感情や表情、考えを見える形にしたり、ある手段を使って物事のありさまを表現したりするときに使う言葉ですね。

【例文】

  • 喜びや悲しみ、怒りなどの感情を文章で表す。
  • 今の心情を芸術表現で表す。
  • 過去の売上データをグラフで表す。
  • 名は体を表す。※ことわざ
  • 信号機が赤色のときは「止まれ」を表している。
  • あれは駐車禁止を表す標識だ。

「現す」の意味・使い方

「現す」の意味は下記のとおりです。

  • 1:今まで見えなかったものを外に出して見えるようにする。実態を明らかにする。
  • 2:持っている力をはっきり表に出す。

「現す」の1の意味は「今までなかったり隠れていたりした物・姿・様子などを外から見えるようにする」ときに使う言葉です。たとえば「森を抜けると、湖が現れた」という文章は、言い換えると「森に隠れていた湖を発見した」といえます。

2の意味で「現す」を使うときは、もともと持っている能力を発揮する場面で使います。

【例文】

  • 逃亡犯が正体を現す。
  • 窮地に立たされ、本性を現す。
  • 隠れていた才能を現す。
  • 20世紀にインターネットが現れた。
  • ピンチの場面で颯爽と英雄が現れた。
  • 30歳を過ぎたころからめきめきと頭角を現す。
  • ジム通いのおかげでようやくダイエットの効果が現れる。

1と2のどちらの意味でも、隠れていたものがそのままの形で表に出てきた時に使います。

「顕す」の意味・使い方

「顕す」は「広く世間に知らせる。顕彰する」という意味です。

「顕」という漢字には「あきらか。はっきりしている」と「あらわれる。あきらかにする。あきらかになる」の意味があります。

前者は「顕在」「顕著」などの熟語で使われ、後者は「顕彰」「露顕」といった形で使われますね。

「顕す」は下記のような使い方をします。

【例文】

  • 功績を世に顕す。
  • 徳を顕す。
  • 善行を顕す。

なお、「顕」は常用外漢字(表外漢字)であることから、「現す」に換えて使われることもあります。

「著す」の意味・使い方

「著す」は「書物を書いて世に出す。書いて出版する」という意味です。

「著す」の読み方は「あらわす」の他に「ちょす」とも読みます。

「著作」「著者」といった熟語からも、「著」という漢字が本に関連している字ということが理解できますね。書物に書き表すという点から、他の「表す」「現す」「顕す」とは違いが明白です。

【例文】

  • 自分のこれまでの人生を著す。
  • 各地の歴史を郷土史として著す。
  • 一連の出来事における現在の気持ちを著す。
  • 作家の〇〇氏は、数多くの秀作を世に著す。

「表す・現す・顕す・著す」の違い・使い分け方

前章では「表す」「現す」「著す」「顕す」の意味や使い方についてお伝えしました。あらためてそれぞれの意味を確認しましょう。

  • 表す:感情や表情を見える形にしたり、ある手段を使って物事のありさまを表現する。
  • 現す:今までなかったり隠れていたりした物・姿・様子を外から見えるようにする。
  • 著す:書物を書いて世に出す。書いて出版する。
  • 顕す:善行などを広く世間に知らせる。

上記のうち、「著す」と「顕す」の違いは明らかですね。

「表す」「現す」「著す」「顕す」のなかでも、特に混同しやすいのが「表す」と「現す」です。

「表す」と「現す」はどちらも「隠れているものを見えるようにする」という意味ですが、細かな点で大きな違いがあります。

「表す」は「感情や言葉、記号にして表現する」のに対して、「現す」は「見える形にして出現させる」という違いがあります。

たとえば、「表す」は「図に表す」「考えを言葉に表す」「怒りの感情を顔に表す」などと使われ、「現す」は「全貌を現す」「頭角を現す」という使い方をします。覚えておきましょう。

「表す・現す・顕す・著す」のそれぞれの類語

さいごに「表す」「現す」「顕す」「著す」のそれぞれの類義語を紹介します。

「表す」の類語

  • 表現する:心理的、感情的、精神的など内面的なものを、外面的、感性的形象として客観化すること。
  • 意味する:表現・行為がある内容を示すこと。
  • 表示する:はっきりと表し示すこと。図表にして示すこと。

「現す」の類語

  • 出現する:隠れていたものや見えなかったものなどが、姿をあらわすこと。
  • 発覚する:隠していた悪事・陰謀などが明るみに出ること。
  • 顕在する:はっきりと形にあらわれて存在すること。

「顕す」の類語

顕揚(けんよう)する:世間に威光や評判などを広め高めること。

「著す」の類語

  • 執筆する:文章を書くこと。
  • 著作する:書物を書きあらわすこと。
  • 書き著す:書物としてまとめ、公にする。著作する。
  • 書き綴る:言葉をつなげて文章を書く。

さいごに

ここでは「表す」「現す」「顕す」「著す」の違いや使い分け方を、それぞれの意味から紐解いてお伝えしましたが、いかがでしょうか。

特に「表す」と「現す」はビジネスシーンのみならず、日常会話のなかでも頻出する言葉のため、混同してしまわないようにこの機会に覚えておくとよいでしょう。

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