突然ですが、「泰然」という言葉をご存知ですか?
日常会話のなかでは見聞きすることのない言葉のため、馴染みが薄いかもしれません。
しかし、ビジネスシーンでは「泰然として構える」「泰然たる態度」などの表現で使われます。「泰然自若」という四字熟語も新聞で頻出しますね。
ここでは「泰然」や「泰然自若」の正しい意味や使い方をお伝えします。言葉の由来や対義語、類義語まで詳しく解説するので参考にしてくださいね。
意味を正しく理解し、場面に応じた適切な使い方ができるよう、チェックしておいてください。
「泰然」の意味・使い方
「泰然」の読み方は「たいぜん」です。
「泰然」の意味は「落ち着いていて物事に驚かないさま」です。
「泰然」の「泰」の漢字には「ゆったりと落ち着いている」「おだやか」という意味があり、「然」は「その通り。しかり」という意味で、他の語につけて状態を表す語です。
そのため、この二つの漢字を並べた「泰然」は「落ち着いていて物事に驚かない状態」という意味になります。
ゆったりと落ち着き、どっしりと構えていて物事に動じない様子を表した語のため、物事が起きてもそれに動じず、落ち着いている人や物に対して、「泰然と」「泰然として」「泰然たる」などの形で使われます。
【例文】
- 周りが騒ぐ中、彼だけは泰然と構えていた。
- 強い信念をもって自らの職責を果たし、泰然と構えるリーダー像が求められる。
- 大海原が泰然として私の目の前に広がっている。
- 彼の泰然たる態度に頭が下がる思いだ。
「泰然自若」の意味・使い方
「泰然」を使った四字熟語に「泰然自若」という言葉があります。読み方は「たいぜんじじゃく」です。
「泰然自若」の意味は「落ち着いていて物事に動じないさま」です。「泰然」と意味はほぼ同じですね。
「自若」は「重大ごとにあたっても、あわてず、驚かず、落ち着いているさま。心や態度に少しの乱れもないさま」という意味があります。
「自若」の「若」の漢字は、漢文の「若シ(ごとし)」から「~のようだ」という意味になります。「自(ら)」と「若」で「自分のようである」ことを意味しています。
そして「落ち着いていて物事に驚かないさま」の意味をもつ「泰然」と合わせて、「泰然自若」は「重大ごとがあっても慌てずに落ち着いていて動じない様子」を表す言葉になるのです。由来としても覚えておきましょう。
【例文】
- 泰然自若とした彼の態度に驚いた。
- システムに重大な欠陥が発覚したときも、彼は泰然自若としていた。
- 株価の乱高下にも一喜一憂せず、泰然自若たる態度で臨む。
- プロアスリート選手には泰然自若のメンタルが不可欠だ。
- 黒田総裁の泰然自若とした姿勢には敬服する。
「失意泰然得意淡然」とは?
「泰然」を使ったことわざに「失意泰然得意淡然」という言葉があります。
読み方は「しついたいぜんとくいたんぜん」です。
「失意泰然得意淡然」とは「物事がうまくいかなくても、あせらず落ち着いて、時節の到来を待つべきだ。うまくいっているときでもおごらずにつつましい態度で当たるべきだ」という意味です。
「失意泰然得意淡然」の漢字の成り立ちからも意味を理解しましょう。
「失意」は「思い通りにいかないこと」、「得意」は「何をやってもうまくいくこと」、「淡然」は「あっさりしているさま」という意味の語です。
つまり、「失意泰然得意淡然」は、物事が思い通りにならないときもうまく進んでいるときも、落ち着いていて動じないことが成功を収めることを意味した語です。
「泰然」の類義語・言い換え表現
「泰然」の類義語は下記のとおりです。
- 悠然(ゆうぜん)
- 沈着(ちんちゃく)
- 従容(しょうよう)
- 静謐(せいひつ)
- 綽々(しゃくしゃく)
- 落ち着き
- 冷静
「悠然」は「落ち着いていてゆったりとしているさま」、「沈着」は「物事に動じないこと」、「従容」は「ゆったりと落ち着いているさま」という意味です。
また、「静謐」は「静かでおだやかなさま」、「綽々」は「落ち着いていてゆとりがあるさま」という意味です。それぞれ「ゆったりと落ち着いている」という意味の「泰然」の類義語に当たります。
あまり耳慣れない言葉であったり、日常会話のなかだと、難しい熟語を使って「泰然」を言い換えても、相手にうまく伝わりません。場面によっては、馴染みのある「冷静」「落ち着き」などの言葉を使った方がいいでしょう。
また、ビジネスやあらたまった場では「悠然」「沈着」などの言葉に言い換えて使ってみてもよいでしょう。言葉は、その場の状況と相手に応じて使い分けることが大切です。
【例文】
- 経営悪化の話を聞いても、彼は悠然としている。
- 冷静沈着な彼女の対応に尊敬の念を抱く。
- 静謐とした室内で、しめやかに行われた。
「泰然」の対義語
「泰然」の対義語にはどんなものがあるのでしょうか。
- 恐々(きょうきょう)
- 狼狽(ろうばい)
- 興奮(こうふん)
- 動揺(どうよう)
「恐々」は「びくびくと恐れるさま、恐れ慎むさま」、「狼狽」は「ふいの出来事などに慌ててうろたえること」、「興奮」は「感情が高ぶること」、「動揺」は「心や気持ちが揺れ動くこと。平静を失うこと」という意味です。
【例文】
- 突然の強風に窓ガラスが割れ、恐々とする。
- 秘密にしていたことを話されてしまい、狼狽を隠せない。
- 趣味のお店の品揃えの多さに、とても興奮した。
- 好きな人が突然目の前に現れ、動揺する。
なお、「泰然自若」の対義語は「戦々恐々」です。これらの対義語も覚えておくと様々な場面で役に立ちますので、ぜひ頭に入れておいてくださいね。
まとめ
「泰然」「泰然自若」のの正しい意味や使い方、そして「泰然」の類義語や対義語についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
「泰然」や「泰然自若」という言葉がどのような場面で使うのかがわかり、スッキリしたと思います。
普段、友人との会話の中ではあまり使うことはないかもしれませんが、年配の方との会話やビジネスの場、講演会のスピーチなどで耳にすることがある言葉ですので、正しい意味を理解しておくといざというときに困ることがなく、スムーズに物事が運びます。
ぜひ覚えておいて、適切な場面で使ってくださいね。