日本語には、よく似た漢字を並べて作られた熟語がたくさんあります。「留意と注意」や「お気遣いとお心遣い」など。
「格別」と「別格」も、漢字の前後を入れ替えた言葉です。しかし、同じ漢字を使っているからといって、意味まで同じとは限らないのが、日本語の難しいところ。
「格別」と「別格」もとても似たニュアンスの言葉で、2つの言葉を同じように使っている方も多いと思いますが、厳密には意味や使い方に違いがあるのです。
ビジネスシーンなどかしこまった場面で、何かを褒めたり賞賛したりするときに使うことの多い「格別」や「別格」。使い方を間違ってせっかくの良い雰囲気を壊してしまわないためにも、正しい使い方をマスターしておきたいですね。
ここでは「格別」と「別格」の意味や使い方について詳しく解説します。違いや使い分け方についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
「格別」の意味・使い方
「格別(かくべつ)」を名詞として使うときの意味は「普通とは違うこと。特に優れていること」です。
かしこまった場面やビジネス文書で使える丁寧な言葉です。
名詞的用法で「普通とは違うこと」と使うことができますが、副詞的用法で「とりわけ・特別」と使うことも可能です。
たとえば、食事の席で美味しい料理を食べたときに「このお刺身のおいしさは格別だ」と使うのが名詞的用法であり、「このお刺身は格別おいしい」と使うのが副詞的用法です。
そのほかの使い方も含めて、例文をみてみましょう。
【例文】
- いつも格別のお引き立てをありがとうございます。
- 今朝の寒さは格別ですね。
- この店の料理の美味しさは、格別ですよ。
- この店の料理は、格別美味しいですよ。
3つ目の例文は「格別」を名詞として使っており、4つ目の例文では副詞として使っています。
「別格」の意味・使い方
「別格(べっかく)」の意味は「定められている形式に拘束されないこと。特別の取り扱いを受けること」を意味します。
「別格」は、他のものや人と比べて優れていたり、他とは違って格が高いことを表します。「他のものとは比べものにならない」「他のものとは別次元である」とも言い換えられ、桁違いであるさまを伝えたい時に使うといいですね。例文は次のとおりです。
【例文】
- 彼女だけ、別格の扱いを受けている。
- 同業者からも「彼は別格の存在」と名高い。
- 他の選手と比べても、彼のプレーは別格だ。
- 数ある日本の山の中でも、富士山の存在は別格です。
「格別」「別格」の違い
「格別」と「別格」は、どちらも「特別」「他とは違う」と似たような意味に思えますが、どのような違いがあるのでしょうか。あらためてとなりますが、それぞれの意味は下記のとおりです。
- 格別:普通とは違う・特に優れている・とりわけ
- 別格:定められている形式に拘束されないこと・他とは違う高い格のもの
両者の違いは、「格別」が「特に優れている」「とても良い」というニュアンスが強い言葉なのに対し、「別格」は「集団や他のものから飛びぬけているさま・桁違いであるさま」を表す言葉なのです。例文で見比べてみましょう。
- 今年の東京の寒さは格別だ。
- 北海道旭川の寒さは別格だ。
旭川の寒さは、日本のどこと比べても桁違いであることがよく分かります。
- 御社の技術力は格別ですね。
- 御社の技術力は別格ですね。
上記の「別格」の使い方では、同業他社の技術力と比較していることが伺えます。比べる対象がないものに対して「別格」を使うと、相手は違和感を覚えるかもしれないので、注意しましょう。
「格別」の類義語
次に、「格別」の類義語を紹介します。
- 特別:他との間に、はっきりとした区別があること
- 特に:他に比べて著しく目立つこと
- 格段(かくだん):物事の程度が甚だしいこと
- とりわけ:同じようなものの中でもその程度が甚だしいこと
- ひときわ:他と比べて一段と目立っているさま
最初に挙げた「特別」は、名詞的にも副詞的にも使えます。また、「特別」は「特に優れている」という意味の他にも、「特別に許可する」のように「特に異質である」という意味も含んでいることを忘れずに。誤解を招かないためにも「特にいい」「特にすごい」と言い換えることをオススメします。
さいごに
「格別」と「別格」について、それぞれの意味や違いを解説してきました。同じ漢字を使っていても、意味には違いがあることが分かりました。効果的に使うことで、相手への印象を変えることもできますね。ぜひ、ビジネスなどかしこまった場面でも使える「格別」や「別格」を使って、ひときわ優れている様子や桁違いな様子を表してみてください。
また、取引先やお客様へ送るビジネス文書の冒頭挨拶として「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」といった使い方も覚えておくといいですね。