社会人になると敬語を使う機会が増えますよね。
「お願い」「ご負担」といったように、「お」や「ご」は名詞の前に付けると丁寧な言い方になる接頭語ですが、正しく使いこなせていない方は少なくありません。接頭語の使い方にもルールが存在します。
特に「手配」を丁寧な言葉に言い換えた表現について、「お手配」「ご手配」のどちらを使うのが正しいか、悩む人も多いのではないでしょうか。
今回は「お」と「ご」の使い分け方を解説します。あわせて、ビジネス上で頻繁に使われる「手配」の敬語、「お手配」「ご手配」の違いについてもお伝えします。
意味や正しい使い方を理解し、丁寧語を適切に用いることで相手に与える印象もよくなります。例文も参考にして、使いこなせるようになりましょう。
目次
「お」と「ご」の付け方ルールは?
「お」「ご」はどちらも漢字で「御」と書き、名詞の前に付けると丁寧な表現になります。では「お」「ご」はどのように使い分けをするのか、まずは基本的なルールをお伝えします。
- 和語には「お」を付ける:お勤め、お住まい、お考え、お友達
- 漢語には「ご」を付ける:ご職業、ご住所、ご意思、ご友人
和語とは日本固有の言葉で、訓読みの熟語のことです。一方、漢語は中国から入ってきた言葉で、音読みの語のことをいいます。つまり、基本的には漢字が訓読みか音読みかによって「お」「ご」の付け方を判断することができるのです。
ただし、なんでもかんでも「お」や「ご」をつければ丁寧な表現になる訳ではありません。「お」や「ご」を付けない例外のパターンもあります。下記の3項目をご覧ください。
(1)外国語由来の単語には「お」も「ご」も付けない
⇒ビジネス、メール
(2)尊敬語には「お」も「ご」も付けない
⇒「召し上がる」に「お」をつけると二重敬語になる
(3)自分の動作や持ち物には「お」も「ご」も付けない
⇒担当の者、差し出す
また、「お」と「ご」のどちらも付けられる言葉もあります。例として以下のようなものがあります。
- お食事・ご食事
- お返事・ご返事
- お勉強・ご勉強
今回のテーマである「お手配」「ご手配」の使い分けもこのパターンです。ただし、どちらの言葉を使うかによって、敬意を表す言葉になっているかどうかも変わるので、気をつけましょう。詳しくは次章で説明します。
「お手配・ご手配」の意味・使い分け方
「手配(てはい)」は、「物事に先だって役割や段取りを決めたり、必要な物を用意したりすること。準備」という意味です。
相手に準備をお願いしたい時に「手配をお願いします」といった使い方をします。
さて、「お手配」「ご手配」のどちらを使うべきかについてですが、結論からお伝えすると、ビジネスシーンで目上の人や取引先に使用するときは「ご手配」を使用するのが適切です。
そもそも、「お」「ご」のついた言葉には尊敬語と美化語にわかれます。
尊敬語は「ご準備」「ご理解」のように使い、相手に敬意を表す表現として用いられる言葉であり、美化語は「お買い物」「お米」のように、言葉自体を丁寧に表した言葉ではあるものの、尊敬の意味は含まれません。
「お手配」は美化語に近い表現であり、対して「ご手配」は尊敬する意味を含む尊敬語やへりくだる謙譲語としても使う言葉のため、ビジネスシーンでは「ご手配」を使います。
- お手配:美化語。緊急性がない場合、急かす必要がない場合に使う。
- ご手配:尊敬語。目上の人やビジネス相手に敬意を払う場合に使う。
【例文】
- ご多忙にもかかわらずご手配いただき、誠にありがとうございます。
- お手数をおかけしますが、早急にご手配くださいますようお願い申し上げます。
- 次回もご手配のほど、よろしくお願いいたします。
「お手配・ご手配」を使ったビジネスメールの例文集
資料作成のお礼メールの文例(取引先)
件名:資料作成のお礼 株式会社〇〇〇〇 平素より大変お世話になっております。 本日、〇〇の資料を拝受いたしましたので この度は当方の急なお願いにもかかわらず 早速、〇日の社内会議にて使わせていただきます。 貴社製品導入の可否につきましては、改めてご連絡致しますので、 取り急ぎ、受領の報告とお礼を申し上げます。 ==================== |
提出物の催促メールの文例(期日を過ぎた場合)
件名:【再送】源泉徴収票提出のお願い 〇〇課長 お疲れ様です。総務部の△△です。 さて、先般ご依頼しております ご提出の期日を〇日とお伝えしたはずですが、 お忙しいところ大変恐縮ですが、 ================== |
さいごに
「お」「ご」は、丁寧な印象を与えたり、相手を敬う気持ちを込めたりする接頭語です。
使い分け方の基本的なルールは、和語には「お」を付け、漢語には「ご」を付けます。ビジネス上でよく使われる「手配(てはい)」は準備を意味する言葉で、和語と漢語の組み合わせでできていることから「お手配」「ご手配」のどちらも日本語の表現として間違いではありません。
ただし、「お手配」は美化語、「ご手配」は尊敬語です。目上の人やビジネス相手に使う時は「ご手配」を使いましょう。