電話対応の際、相手の社名や名前をはっきり聞き取れなかったり、相手が名乗らなかったりしたとき、確認したい場面がありますよね。
そのほかにも、来訪者に不意に声をかけられ、取り次ぐために名前を伺うシチュエーションを経験したことはありませんか。
そんなときについ使いたくなる「どちら様でしょうか?」「どなた様でしょうか?」の言葉。丁寧な言い回しのつもりでも、正しく敬語を使えなければ、相手に不快な気持ちを抱かせてしまいます。
ここでは、「どちら様」「どなた様」の意味や正しい使い方、違いについて詳しく解説します。敬語として正しい表現はどっちなのか、また言い換え方や電話マナーについても紹介するので参考にしてくださいね。
目次
「どちら様」「どなた様」丁寧で正しい敬語はどっち?
そもそも「どちら様」「どなた様」は敬語表現として正しい言葉なのでしょうか。
結論からお伝えすると、「どちら様」「どなた様」は、どちらも誤用表現です。
まず、「誰」の尊敬語は「どなた」であり、「どちら」も丁寧な言い方なので、この時点ではふたつとも間違いではありません。ところが「どちら様」「どなた様」は敬語表現のあとに敬称である「様」が続くため、二重敬語となり間違いなのです。
正確には誤用表現ですが、接客用語として浸透していることから、皆さんにとっても馴染み深い言葉になっているのではないでしょうか。
また、「相手への伝わり方」という視点から見ても、初対面の方に名前を尋ねる言い方としては不適切です。知らない番号からかかってきて、対応時に「どちら様でしょうか」「どなた様でしょうか」は、丁寧な表現を抜きにストレートな言い回しにすれば「あなたは誰?」という問いかけになってしまいます。
もしもあなたが初対面の人から「どちら様でしょうか」「どなた様でしょうか」などと名前を尋ねられたら、きっと「何様なんだ!」と失礼な印象を受けるのではないでしょうか。
そのため、残念ながらどちらの言い回しも避けた方が無難です。
「どちら様」「どなた様」の正しい言い換え敬語表現
それでは、相手の名前を確認したいとき、どのように言い換えれば失礼に当たらないのでしょうか。
声をかけるとき、「どちら様でしょうか」「どなた様でしょうか」という素っ気ない言い回しよりも、「お名前をお聞かせいただけますでしょうか」「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」と伝えた方が、丁寧な印象を与えることができます。
なお、頭に「失礼ですが」「恐れ入りますが」とクッション言葉を付け加えることによって、より丁寧な姿勢が伝わりますよ。
【例文】
- 失礼ですが、お名前をお聞かせいただけますでしょうか。
- 恐れ入りますが、御社名とお名前をお聞かせ願えますか。
- 誠に恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。
社内で普段顔を合わせる機会のない目上の方と顔を合わせたり、大事なお客様が来社し、急な対応を迫られたりする状況もままあります。
そんなとき、誰に対しても丁寧に接することができるよう、上記の言い回しが自然に使えるように覚えておくとよいですね。
「お名前をいただけますか」「頂戴できますか」も誤用表現
ときおり下記の言葉を使う方を見かけます。
- お名前をいただけますでしょうか
- お名前を頂戴してもよろしいでしょうか
「いただく」や「頂戴」は物をもらうときに使う言葉のため、名前を聞く場面では不適切な表現です。名前は「聞く」ものであり、物のように「いただく」ものではありません。間違った言葉なので、使わないよう注意しましょう。
「どちら様」「どなた様」を言い換えたメールの書き方
面識のない相手からビジネスメールを受け取ったときの返信メールの文例を紹介します。
社外に送るメールの場合
件名:Re:貴社サービスに対するご質問 この度は弊社サービスに関するお問い合わせをいただき、 私、営業担当の△△と申します。 ご質問いただいた内容につきましては つきましては、誠に恐れ入りますが、 お問い合わせフォームのお名前ご記入箇所が お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
社内メールの場合
件名:Re:会議日程の件 お疲れ様です。 来週の会議日程の件、承知いたしました。 誠に申し上げにくいことですが、 PCの入れ替えに伴い、過去に登録していたアドレスが 不躾なお願いとなり失礼ですが、 ==================== |
さいごに
「どちら様」「どなた様」は、どちらも二重敬語であり、相手によっては失礼な印象を受ける使いどころの難しい言葉です。一口に敬語といっても、奥深いものですね。
ビジネスシーンではあなたの話し方ひとつで相手に伝わる印象も大きく変わります。「変な言葉遣いだな」と思われてしまうと勿体ないので、気をつけましょう。
使い方に慣れ、状況や相手に応じて「どちら様」「どなた様」を言い換えて使えるようになれば、コミュニケーションのバリエーションがより増えていくことでしょう。