なにか大変なことが起こったときに聞かれる「未曾有」という言葉、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。特に大きな地震など、災害が起こったあとのニュースなどでよく聞かれるかもしれませんね。
とは言うものの、「未曾有」の読み方が分からない人もまだまだ多いのではないでしょうか。
特に「曾」の漢字は、日常よく目にするようなものでもなく、これ単体でもなんと読むか首を傾げてしまいそうです。
ここでは、「未曾有」の正しい意味や使い方、違いについて解説します。類義語や、その例文も紹介するので参考にしてくださいね。
「未曾有」の読み方・意味・使い方
まず「未曾有」は「みぞう」「みぞうう」の2つの読み方がある言葉です。「今まで一度もなかったこと。きわめて珍しいこと」という意味があります。
麻生元首相が「みぞうゆう」と読み間違いして話題になった言葉でもありますが、「みぞう」と「みぞうう」のどちらかを覚えておきましょう。
未は「いまだ」、曾は「かつて」と読み、これら2つの漢字の打ち消しの意味に伴って、有は否定形の「あらず」となり、「いまだかつてあらず=今まで一度もなかったこと」というそれぞれの漢字の意味を並べたシンプルな単語です。
未曾有という言葉が一躍有名になったのは、みなさまにとってもまだ記憶に新しい、2011年3月11日に起こった「東日本大震災」の報道ではないでしょうか。
聞き慣れないその言葉に、漢字すら想像できない方も多かったはずです。「未曾有の大震災」は、「いまだかつてなかったような大震災」という意味だったんですね。
【例文】
- 未曾有の大惨事
- 未曾有の大災害
- 未曾有の大事故
- 未曾有の不祥事
- 誰も予期せぬ巨大な嵐により、街は未曾有の雨風に見舞われた。
- 過去の経験からも類を見ないほどの未曾有の危機である。
この例文からもお分りいただける通り、基本的には悪い意味やネガティブな表現をするときに使われる言葉です。
「未曾有」の語源・由来
「未曾有」の語源となっている言葉は、「奇跡」「びっくりした」「非常に珍しい」などの意味を持つ、サンスクリット語の仏教用語「adbhuta」です。
「adbhuta」を漢訳した際に「未(いまだ)曾(かつて)有(あらず)」という漢字があてられ、「未曾有」という言葉になりました。
もともとは仏教用語でしたが、日本に伝わる中で広く一般的に使用されるようになります。しかも、語源になった言葉の意味にもあるとおり、本来の意味は「いままでにないほど素晴らしい」という、よい意味として使われていた言葉だったのです。
その後、時代の流れとともに、よい意味としても、悪い意味としても使える言葉として変化していき、現代では悪い意味として使われることが主となりました。
最近の若者が使う「やばい」という言葉も、「未曾有」と同じような歴史をたどった言葉といえるでしょう。昔は悪い意味として使われていましたのが、最近は感動したときや、おいしいものを食べたときなどにも使われていますよね。
歴史とともに使い方が変わる言葉は数多くありますが、「未曾有」もそのひとつだったというわけです。
「未曾有」の類語
それでは、「未曾有」と似た意味で使える類語には、どのようなものがあるのでしょうか。例文と合わせてチェックしてみましょう。
- 前代未聞:前代未聞の事態に戸惑いを隠せない。
- 空前:空前の大ヒットを果たす。
- 記録的:記録的な大雨のため土砂災害に注意してください。
- 歴史的:歴史的な瞬間を目に焼きつける。
- 類い稀:類い稀な才能だ。
- 前例のない:それは前例のない大事件だった。
中にはよい意味として使われる言葉もありますが、共通するのは「いままでにない」という意味を含むこと。
なお、例文でもご紹介した「空前」は、「空前絶後」という四字熟語として聞かれることも多いのではないでしょうか。これは「未曾有」とよく似ていながら、より強い意味を持つ言葉で、その意味は「過去にも例がなく、将来もありえないと思われること。きわめて珍しいこと」です。
「いままでにない、かつ、これからもありえない」という意味になりますので、容易に使うべき言葉ではないと言えるでしょう。
まとめ
パッと見た印象では、読み方が不明で、なかなか意味も分かりにくい「未曾有」という言葉。しかし使い方さえ分かれば、案外難しくない言葉でしたね。
例文として挙げた類語のなかには、一度は耳にしたことのある文章が含まれていたのではないでしょうか。
いままでに誰も経験したことのないような事態が起こる場面とは、想像するだけでも恐ろしいも。とは言うものの、そういった「未曾有」の経験を積み重ねる中で、人類は知識を蓄え、そのつど対策を練り、いまの時代を生きているのでしょう。
先人たちに感謝するとともに、現代を生きるわたしたちも、未来に生まれる人類たちへなにか残していたいものです。