同音異義語(発音が同じで意味の異なる語)を正しく使い分けるのは意外と難しいものです。ましてや、それが類義語であればなおさらです。
今回は「時期・時季・時機」の3つの言葉の意味とその違い、使い分け方を説明します。
それぞれを構成する漢字から読み解くと、「時間」に関する熟語であることはお分かりになると思います。これらは身近な言葉であるだけに使用する頻度も高く、正しく意味を理解しておけば語彙力もぐっと上がるため、しっかりと使い分け方をマスターしましょう!
「時期」の意味・使い方
「時期(じき)」とは「ある幅をもった時。期間。その時。そのおり」という意味があります。
「時期」は、過去から未来に流れる時間のうち、ある期間を指すときに使う言葉です。例えば、「学生時代の春休み」もひとつの時期ですし、「明日のお昼休み」もまたひとつの時期といえます。
【例文】
- 梅雨の時期は毎年憂鬱になる。
- 高校生のあの時期はとても楽しかった。
- 時期がくれば彼女も理解してくれるだろう。
- 今結論を出すのは時期尚早だ。
※時期尚早とは「それを行うにはまだ早過ぎる」という意味です。ふさわしい時期に至っていないときに用いる四文字熟語。
「時季」の意味・使い方
「時季(じき)」は「季節。特に、1年のうち、そのことが盛んに行われたり、そのことに最もふさわしかったりする時期」という意味です。
春夏秋冬の季節のうちのいずれかを指す場合もあれば、旬の食べ物が美味しい期間や季節を感じさせる瞬間を表す場合にも使われます。
「時季」を使った分かりやすい例を挙げると「海水浴の時季がやってきた」という表現です。「海水浴の時季」といえば、多くの方が夏や8月を思い浮かべると思いますが、その季節特有の行事や催し、食べ物などがあるときに使う言葉なのです。
また、「時季」は、季節の変わり目がはっきりしていて、春夏秋冬の移り変わりを愛する日本ならではの言葉でもあります。
【例文】
- 今年もお祭りの時季がやってきた。
- 12月はおもちゃ業界が力を入れる時季だ。
- 夏は一年のなかでビールが一番おいしい時季だと思う。
「時機」の意味・使い方
「時機(じき)」とは、「あることをするのに適したとき。しおどき。適当な機会。チャンス」という意味です。
時間の流れの中で、極めて短い時間、あるいは瞬間を指す言葉として使うことができます。
「チャンス」という意味合いに絞ると、派生語に「好機(物事をするのにちょうどよい機会)」や「危機(悪い結果が予測される危険な時)」があり、いずれも「機」という漢字が共通しています。これらの言葉においての「機」という漢字は、「機会」という意味を表しています。「チャンスは一瞬」というように、時間の流れのごく短い間を表す言葉であるということがわかりますね。
【例文】
- この時機を逃す手はない。
- あの時機に動いておけばという後悔はいくつかある。
- 辛抱強く株価が安くなる時機を待つことが重要だ。
「時期・時季・時機」の違い・使い分け方
ここで三つの類義語の意味を整理しましょう。
- 時期:ある幅をもった時。期間。その時。そのおり。
- 時季:季節。1年のうち、そのことが盛んに行われたり、最もふさわしかったりする時期。
- 時機:あることをするのに適したとき。しおどき。適当な機会。チャンス。
3つの言葉に共通することは、過去から未来へと流れる時間における、ある時間を指すということです。
一方で、使い分け方は次の通りです。
「時機」については「好機やチャンスを指して使う言葉」と覚えましょう。「時期」と「時季」は使い分けが難しく、どちらの言葉を使っても正しく成立する場合があります。誤った使い方をしないように、というよりは、より正しい使い方するように心がけると良いでしょう。
ポイントとしては「季節」が絡む表現には「時季」を使うと、より正しい言葉遣いをすることができます。
【例文】
- 青春時代の話をするとき:過去のある一定の期間を指すため「時期」を使う。
- 一年で最も楽しみにしているイベントの話をするとき:その期間にのみ発生するイベントであるため「時季」を使う。
まとめ
ここでは「時期・時季・時機」の3つの言葉の意味や違いについて解説しましたが、いかがでしょうか。
時間を表す言葉は、それが指し示す「長さ」と「環境」によって分類されています。古くから季節の移り変わりを愛する日本では、その時間を示す言葉も多く作り出しています。
例えば「朝」を指す言葉でも、「未明・明け方・夜明け・早朝・黎明(れいめい)・暁(あかつき)・東雲(しののめ)・曙(あけぼの)」などのように細かく分類することが可能です。
これらの言葉は、上記で解説した3つの言葉とは違い、より具体的な時間帯を指しますが、日本語において「時間」は特別であることが分かります。
今回解説した3つの「じき」は、日常生活やビジネスの場でも使う機会が多いため、しっかりと理解して正しく使い分けていきましょう。