驚いた様子を表現する「唖然」「呆然」「愕然」の言葉について、それぞれの意味や違いを正しく理解できていますか。
日常生活のなかで耳にしたり口にしたりする機会の多い言葉なので、なんとなく使っていた方は、ここで正しい使い方を習得しておきましょう。
ここでは、「唖然」「呆然」「愕然」の意味や違い・使い分け方についてお伝えします。例文つきで詳しく解説するので参考にしてくださいね。
「唖然」の意味・使い方
「唖然」の読み方は「あぜん」です。意味は「思いがけない出来事に驚きあきれて声も出ないさま。あっけにとられるさま」となります。
「唖然」の漢字の成り立ちからも、その意味をうかがい知ることができます。「唖」には「言葉が話せない」という意味があり、「然」は、その状態を表す言葉です。つまり、「唖然」は「出来事に触れて驚きのあまり、開いた口が塞がらない様子」を表し、自分の予想や想像を超える出来事に直面したり、常識はずれの言動を見聞きしたときに使われます。例文は下記のとおりです。
【例文】
- 航空機のチケット代があまりに高すぎて唖然とした。
- お客様とはいえ厚かましい態度に、スタッフ一同唖然とする。
- 隣人が私の裏庭にごみを投げ捨てていることを偶然見つけ、唖然とした。
- プロジェクトが突然中止になり、メンバーは唖然としています。
「呆然」の意味・使い方
「呆然」の読み方は「ぼうぜん」です。呆然には、下記の2つの意味があります。
- あっけにとられているさま
- 気抜けしてぼんやりとしたさま
「唖然」と同様に、構成する漢字からも意味を理解することができます。「呆然」の「呆」には「呆れる、じっとしている」という意味があり、「驚きのあまり、ぼんやりとして動けずにいる様子」を表しています。
それでは、「呆然」を使う場面は、どのようなシチュエーションが考えられるでしょうか。「呆然」の言葉を使った例文をいくつか挙げてみます。
【例文】
- 自宅に帰りつくと家が全焼しており、呆然と立ちつくした。
- 不慮の事故による親友の訃報に、呆然とした。
- 取引歴の長い企業から契約を更新しない旨を告げられ、呆然とした。
「愕然」の意味・使い方
「愕然」の読み方は「がくぜん」であり、意味は「非常に驚くさま」です。例文は下記のとおりです。
【例文】
- 友人が当てた宝くじの当選額に、愕然とした。
- 空港でパスポートを忘れたことに気がついて愕然とした。
「唖然・呆然・愕然」の違い・使い分け方
つづいては、それぞれの言葉の違いについて解説します。言葉の意味をあらためて整理したので下記をご覧ください。
- 唖然:驚きのあまり、声も出ないさま。呆気にとられる様子
- 呆然:驚きのあまり、気抜けしてぼんやりとした様子
- 愕然:非常に驚くさま
まずは違いが分かりやすい「愕然」との使い分け方から解説します。「唖然・呆然」は、上記のそれぞれの意味からわかる通り、驚いたときの様子や表情まで表現していますが、「愕然」は心理的な状態のみを表しています。
「愕然」の「愕」には「驚く」という意味があることから、漢字の成り立ちからも「驚いた状態」であることがわかります。驚きの度合いは「唖然」「呆然」と比べて「愕然」のほうが強いといえるでしょう。
つづいては、「唖然」と「呆然」の使い分け方を説明します。「唖然」には、「意外なことに出会ってものを言えない様子」を表しているのに対し、「呆然」は「驚きのあまり、張りつめていた気持ちが緩み、放心したりしてぼんやりすること」を表しています。つまり、「唖然」は「何も言えない」、「呆然」は「何もできない」ときに使います。
それぞれの違いは下記のとおりです。
言葉 | 使い分け方 |
唖然 | 驚きのあまり、何も言えない状態 |
呆然 | 驚きのあまり、何もできない状態 |
愕然 | 非常に驚いた様子 |
それぞれの言葉の意味と使い方を振り返ったところで、「唖然・呆然・愕然」の例文をおさらいしてみましょう。
【例文】
- クライアントの傍若無人な振る舞いにスタッフ一同、唖然としていた。
- 思いがけない結末に呆然と立ちすくむ。
- 東京と田舎のあまりの格差に愕然とした。
まとめ
「唖然・呆然・愕然」の意味や言葉の違いについて解説しましたが、いかがでしょうか。
どの言葉も驚いた状態を表す言葉ではあるものの、驚いたときの心理状態や様子には違いがあることが分かったと思います。
言葉の意味を理解して正しく使うことにより、相手にあなたの考えや主張を正確に伝えることができます。また、日本語は「世界で最も難しい言語」といわれることもあり、使いこなすだけで大きな武器にもなり得るでしょう。
この機会に言葉の意味や違いが曖昧な言葉を学んでみてはいかがでしょうか。