年配の方や時代劇中で「面目丸潰れ」などと口にするのを聞いたことはありませんか?
でもこの「面目」という言葉、いざ自分が使うとなると正直読み方もあやふやで自信がないという方も多いのではないでしょうか。「面目」を使った言葉はいろいろありますが、特に今回は「面目ない」にスポットを当てていきたいと思います。
軽いタッチで謝りたい時になんとなく「いやー、面目ない!」と口にしがちですが、そもそも誰に対してどのようなタイミングで使っていいものなのか。ビジネス上で使っても問題ないのか。
ここでは「面目」の正確な意味や使い方を確認すると共に、似たような場面で使われがちな「かたじけない」との違いもチェックしていきましょう。
「面目」の意味
面目は「めんぼく」もしくは「めんもく」と読みます。「世間に対する体面・立場・名誉」や「体裁。物事のありさま、ようす」といった意味があります。
本来は「めんもく」と読む仏教用語で、「いのち(存在)のありさま・姿」を指していました。これが転じて現在では「めんもく」は「顔つき、かおかたち」「本旨、主旨」といった意味で用いられるようになりました。こんな由来の「面目」ですが、現代ではどちらの読み方を使っても間違いではないので安心してください。
また、一説には人の顔を見て性格や信用できるか否かを推し量ったりする、という顔の重要性から「顔ひいては面目が体面や世間からの評価を意味する言葉になった」という説もあります。それではこの「面目」が一体どういったシーンで用いられているのか、次の章でご紹介します。
「面目」の使い方
面目は複数ある意味の中でも特に名誉や立場といった意味で使われることが多いです。使いこなせると少しスマートな印象が得られるので、下の例文でよく聞く慣用句を中心に確認してみましょう。
- 面目丸潰れ:「ここで失敗したら、私の面目が丸潰れだ」→体面・名誉がひどく傷付いて、顔向けできなくなること
- 面目が立つ:うまくリカバリしてなんとか面目が立った→名誉が傷付けられずに済む。顔が立つ
- 面目躍如(めんもくやくじょ):難しい試合だったが見事優勝してエースの面目躍如となった→その人らしい良い点が現れているようす
- 面目を施す:満足のいく旅行をプランニングしたことで、大黒柱としての面目を施した→名誉を得る、体面を保つ
- 面目次第もない:期待に応えられず面目次第もない→全く面目ない
面目躍如などは日常会話でもよく耳にしますね。「面目」、是非使いこなしてください。
「面目ない」の意味とは
面目を使った言葉で最もよく耳にするのは「面目ない」ではないでしょうか。やや年配の方を中心に謝罪の際によく使われるこの言葉ですが、改めて言葉の意味を確認してみましょう。
「面目ない(面目がない)」は「めんぼくない」もしくは「めんもくない」と読み、「恥ずかしくて、または申し訳なくて合わせる顔がない様子」を意味します。相手の期待に応えられなかったというネガティブな場面で気持ちを表すのに使われる言葉で、主に男性が多く用いるものとされています。
また「面目ない」はあくまで申し訳なさで肩身が狭いという気持ちを表現する言葉であって、正式な謝罪の言葉ではないのでくれぐれもビジネスシーンでは使わないように注意しましょう。
下の例のように「面目なさ」「面目なげ」といった使われ方もしますので、合わせて覚えておくと幅が広がります。
- とんだ失態を演じてしまいまったく面目ない
- 面目がないと何度も首を垂れた
- あまりの面目なさに心が押しつぶされそうだった
- 彼は面目なげにうなだれた
また「面目ない」と間違えやすい言葉として「面目を失う」というものがあります。「ない」と「失う」、どちらもなくなってしまうという点で同じ印象を受けますが、後者は「面目をつぶす」と同様に「名誉を傷つけられる」という意味なので混同しないように注意が必要です。
「面目ない」と「かたじけない」の違い
なかなか最近耳にしなくなりましたが、「かたじけない」という言葉も面目ないと同様に申し訳ないといった気分の時に使われる印象がありますね。でも実は辞書を開いてみると、「かたじけない」は「好意がありがたい」「恐れ多い」といった意味を持ちます。
つまり、失敗した時などに申し訳なくて顔向けできないといった時に使うのが「面目ない」で、相手の心遣いを受けて顔があげられないほど恐縮している様を伝える言葉が「かたじけない」なんですね。
顔が向けられない点では同じですが、その心持ちはまったく逆となりますので、使う際は注意が必要です。また、「かたじけない」は少し古風な言い回しなので、ビジネス上では使わないのが無難でしょう。
まとめ
「面目」は「めんぼく(めんもく)」と読み、「世間に対する立場や名誉」「物事のありさま」を意味します。また謝罪の言葉として使いがちな「面目ない」ですが、あくまで申し訳なくて顔向けできないといった気持ちを意味する言葉であって謝罪の意味は含まないので、ビジネスシーンで用いる際は特に注意が必要です。
また面目ないと同じようなシーンで使われがちな「かたじけない」ですが、こちらは面目ないとは違い「恐れ多い」といった意味となります。頭を下げながら口にする点では同じですが、その内面はまったく逆ですので使い方に気を付けましょう。さらにかたじけないは古風な言い回しなので、くれぐれもくだけた間柄だけで使うようにしましょう。