日常会話では使わないけれど、ニュースなどで耳にする機会がある「罷免」「弾劾」「更迭」「解任」という言葉。詳しい意味は分からなくても、ネガティブなイメージの言葉だということは分かりますね。
どれも似たような意味に取られがちですが、正確にはすべて違う意味だということをご存知でしたか?それぞれの意味や違いを正しく理解しておかないと、ふとした会話の中で恥ずかしい思いをするかもしれません。
これでは、「罷免」「弾劾」「更迭」「解任」のそれぞれの意味や違い、例文を紹介するので、この機会に4つの言葉の使い方をマスターしておきましょう。
「罷免・弾劾・更迭・解任」の意味
まず、それぞれの言葉の意味を簡単に説明します。
- 罷免:職を辞めさせること
- 弾劾:罪や不正に対して責任を問うこと
- 更迭:ある役職を他の人に交代させること
- 解任:任務を解くこと
これだけでも、意味に違いがあることが分かりますね。これから、さらに詳しい意味や使い方を解説していきます。
「罷免」の意味
罷免(ひめん)とは、公務員の職を強制的に辞めさせる時に使う言葉で、役職だけでなく公務員としての身分も失われます。主に大臣や裁判官といった特別な役職に就いている人に使われ、一般公務員に使われるのは「免職(めんしょく)」という言葉。どちらも本人の意志とは関係なく、偉い役職の人が権力を使って辞めさせる場合に使われます。次に例文を紹介します。
- 首相が大臣を罷免する
- 野党は、大臣の罷免を要求した
例文を読むと一般人には無関係と思われる「罷免」ですが、衆議院議員選挙の際に行われる裁判官の国民審査は、裁判官を罷免するべきかどうかを国民に問う制度となっています。
「弾劾」の意味
罷免が職を辞めさせることであるのに対し、弾劾(だんがい)は罷免などを行う手続き全般のことを指します。日本では、裁判官や人事官といった国家公務員の特別職について弾劾制度があります。身分にふさわしくない行為をしたり職務上の義務に違反にした場合に、弾劾裁判で罷免を行うかどうかの判断が下されるのです。裁判官の場合は裁判官弾劾裁判所、人事官の場合は最高裁判所が弾劾裁判を行います。
では、例文を紹介します。
- 弾劾により、裁判官を罷免する
- 「訴追」とは、弾劾の申し立てを行って罷免を要求することである
日本では弾劾の対象となるのは裁判官と人事官のみですが、アメリカのように大統領に対して弾劾をおこなうことができる国もあります。
「更迭」の意味
政治ニュースで耳にすることが多い更迭(こうてつ)は、大臣などが職を降りる時に使われるイメージですが、実は「役の交代」という意味。ある人の役を解き、別の人に役を交代させることを更迭というのです。大臣・警察幹部など政府機関の高い地位の人に使われることが多い言葉ですが、大企業の幹部やスポーツチームの監督など、民間の要職者に使われることもあります。例文としては
- 不適切発言により、大臣が更迭された
- サッカーチームの監督が解任されたが、事実上の更迭といえる
と、自分の意志で辞めるのではなく、任命権を持つ人からクビにされる場合に使います。
「解任」の意味
解任(かいにん)は漢字から想像できるとおり、現在の任務を解くという意味です。役職のある人に用いられますが、国家公務員や特別職の人に限らず、どのような地位・役職の人にも使われています。例えば、ある会社の取締役の場合、解任によって取締役という地位は失いますが、退職させられるわけではありません。解任は、周囲の意志によって行われることが多いです。例文を紹介します。
- 取締役に対して、解任を通知する
- すべての議事が終了したので、議長を解任します。
例文からも分かるように、総会などで選出された議長に対して「解任」を使うこともあり、単純に「任務を解く」という意味で用いられる場合もあります。
「罷免・弾劾・更迭・解任」の違い
どの言葉も「今の職を失う」というイメージに取られることが多いですが、厳密には意味が異なることが分かりました。改めて例文を比較してみましょう。
- 罷免:首相は大臣を罷免した
- 弾劾:弾劾により、裁判官を罷免する
- 更迭:不適切発言により、大臣が更迭された
- 解任:取締役に対して、解任を通知する
「罷免」は偉い役職の人が権力を使って一方的に身分を剥奪するのに対し、「弾劾」は罷免が決定するまでの手続きをさすことから、「弾劾」の意味の中に「罷免」が含まれていることが分かります。
また、「更迭」は高い地位に就いてる人の任務を解いて新しい人をその役職に充てることなので、「罷免」「解任」は「更迭」に含まれることになります。
まとめ
どの言葉にもマイナスのイメージがある「罷免」「弾劾」「更迭」「解任」ですが、これまでの解説と例文によってそれぞれの意味や使い方に違いがあることは伝わったでしょうか?
とくに報道などでこれらの言葉を使う方にとっては、使い方を間違えることは許されません。
例文からも分かるとおり、一般人の日常会話ではあまり出番のない言葉ですが、だからこそ正しく使えるとちょっと鼻が高いですね。言葉の意味を正しく理解することで、これまで何気なく見ていたニュースの見え方も変わってくることでしょう。