本やテレビなどで時おり見かける、「稀有(けう)」という言葉。改まった感じになって文章が引き締まるので、ぜひ使いこなしたい言葉の一つですね。
ところがパソコンで「けう」と入力すると、変換候補には「希有」という字も出てきます。「稀有」と「希有」、よく似ていますが…うーん、どちらを選べばいいのでしょう?意味をよく理解しないまま使って、恥ずかしい思いもしたくないですね。
この記事を読むと「稀有・希有」の読み方はもちろん、その意味や違い、使い方についてもスッキリ理解できます。
「稀有・希有」の意味
「稀有」「希有」の読み方は、どちらも「けう」です。また、「めったにないこと」「非常にめずらしいこと」という同じ意味の言葉です。
「きゆう」という読みもありますが「希有元素(きゆうげんそ)」「希有金属(きゆうきんぞく)」などの言葉に使う以外は「けう」と読むのが一般的です。
「稀有・希有」の漢字があらわすものとしては、「稀」と「希」どちらも「めずらしい」という意味です。これに「有」という存在を表す字を合わせて「存在がめずらしい =めったにない」ということを表しているんですね。
そこから、「稀有・希有」は「これは、他にはないめずらしいこと(もの・人)なのだ」ということを強調したいときに使われているのです。「稀有・希有」の使い方としては、次のような例があります。
【例文】
- 彼女の稀有な才能は、小さい頃からきわだっていた。
- 日本は、地理・歴史・文化のどれにおいても世界的に希有な国です。
- 稀有な生態をもつ動物の研究をしています。
「稀有・希有」の違い
結論からお伝えすると「稀有」と「希有」の意味に違いはありません。どちらも、「非常にめずらしいこと」という意味です。
- 彼は、この組織内においては稀有な存在だ。
- 彼は、この組織内においては希有な存在だ。
このように、どちらも文章の中で同じように使うことができます。
- いまどき稀有な、親孝行な子だ。
- いまどき希有な、親孝行な子だ。
オリジナルバージョンの「稀有」と、「稀」の字のシンプル版である「希」の字を用いたバージョンの「希有」、というのがこの二つの言葉です。
「稀有・希有」の使い方・例文
「稀有・希有」は「とてもめずらしい」という意味を強めたいときに、人・こと・ものなどのさまざまな対象に使うことができます。例文を見てみましょう。
【例文】
- あなたの稀有な能力を、ぜひ我が社で生かしてみませんか。
- その画家の稀有な才能は、早くから注目されていた。
- ポンペイ遺跡の保存状態の良さは希有である。
- 村おこしを成功させた希有な例をご覧ください。
- 好きなことを仕事にできるのは稀有なことです。
- 稀有な偶然が重なって、少女の命は助かった。
- 全員の心がひとつになった希有な瞬間。
「稀有・希有」は、「めったにないうえに、とても貴重」というニュアンスをふくめる場合によく使われています。
「稀有・希有」の類語
「稀有・希有」の類義語には次のようなものがあります。
【例文】
- まれ(数が少なく、めずらしいこと。普通とちがうこと)
- めったにない(存在したり、起こることがとてもまれなこと)
- 異色(普通とは異なること。目立った特色があること)
- 非凡(並のものより特にすぐれていることや、その様子)
- 並み外れた(能力や性質が、普通から大きくはなれていること)
- たぐいまれな(他に同じようなものは中々ない様子)
- 比類ない(極めてまれなこと。他に例がないこと)
これらの表現と「稀有・希有」を合わせて使うと意味がダブるだけでなく、表現がくどくなるので注意しましょう。
「稀有・希有」の対義語
「稀有・希有」の対義語には次のようなものがあります。
【例文】
- 普通(ほかと比べて変わらないこと)
- 人並み(世間並み・平均的であること)
- 一般的(ひろく行き渡っているさま)
- ありふれた(どこにでもあり、めずらしくないこと)
- 平凡(特に優れても変わってもいないこと)
- ざら(めずらしくもなく、ありふれているさま)
上記の例文のうち「普通・人並み・一般的」は、単純に「平均的なさま」を表しています。いっぽう、「ありふれた・平凡・ざら」には「目新しさがなく面白みのない・つまらない」という意味もふくんでいます。対義語を見ることで、もとの言葉の理解がよりいっそう深まりますね。
まとめ
「稀有・希有」は読み方が同じというだけでなく、意味や使い方にも違いはないということでした。同じ意味でも「レアな」「めずらしい」などよりも重みがあり、ビジネスライクな表現である「稀有・希有」。
反面、使いすぎると軽はずみで大げさな印象になってしまうこともあります。説得力のある文章を書くためには、言葉の持つ意味やその程度を考えながら、効果的に文章に盛り込むようにしましょう。それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。