「観念」「概念」の意味・違い|「固定概念・固定観念」はどっちが間違い?

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「観念」「概念」の意味・違い|「固定概念・固定観念」はどっちが間違い?

日本語には音や漢字、意味が似ている言葉がたくさんあるので、使い分けが難しいですね。

たとえば「観念」と「概念」の言葉。哲学的な難しい言葉ですが、意味があいまいになっていたり、混同したりしてはいませんか?

「固定観念」「固定概念」という使い方をする方もいますが、実は「固定概念」は間違った使い方なんです。

ここでは「観念」と「概念」の意味や違いを、例文をあげて詳しく解説します。「固定概念」が間違いになる理由についてもお伝えするので参考にしてくださいね。

「観念」の意味・使い方

「観念(かんねん)」には下記の4つの意味があります。

  • 1:物事について抱く考えや意識。
  • 2:あきらめること。覚悟すること。
  • 3:主観としての人間の意識内容。思考の対象となる心的形象。(哲学)
  • 4:精神を集中し、仏や浄土の姿、仏教の心理を思念すること。(仏語)

日常会話のなかでは「ついに観念した」というように2の意味で「観念」を使うことがあると思いますが、「概念」と混同して使ってしまいがちなのは1の意味で使うときですね。

ある物事について個人が抱く考えや意識という意味合いで、人それぞれ観念は変わってくることを表した語です。

【例文】

  • 彼とは経済的な観念が違いすぎる。
  • あの人には時間の観念がないので困っています。
  • ビジネスについての観念が似ている相手とは、商談がスムーズに進む。

3つの例文から、「観念」が人によって違うことがよく分かりますね。

「概念」の意味・使い方

「概念(がいねん)」は下記の2つです。

  • 1:物事の概括的で大まかな意味内容。
  • 2:物事の本質を捉える思考の形式(形式論理学)。

「概括的」は「物事の内容を大ざっぱにまとめること」や「要約」を意味することから、「概念」は「ある物事を大まかに全体から見たさま」を表した語となります。

簡単に言うと「コンセプト」と言い換えることもできます。

【例文】

  • 子どもは、体験を通して数の概念を獲得していく。
  • これまでの宇宙についての概念を覆すような大発見。
  • たくさんの猫の写真を見せることにより、人工知能が「猫」という概念を得た。

それぞれ、「数とはこういうもの」「宇宙とはこういうもの」「猫とはこういうもの」という大まかな特徴を意味します。

「観念・概念」の違い・使い分け方

これまで「観念」と「概念」の意味や使い方について例文をあげて解説してきました。つづいては、両者の違いや使い分け方をお伝えします。

混同しやすい「観念」と「概念」の意味をあらためて確認しましょう。

  • 観念:物事に対して個人が抱く考えや意識
  • 概念:物事を大まかに全体からみたさま・物事が「何か」ということ

「観念」には上記した意味のほか、「主観としての人間の意識内容※意味3」があることから、つまり「ある物事について個人がどのように感じているか」という意味合いがあります。人によって金銭感覚が異なるように、人それぞれ考え方が異なるものが「観念」というわけですね。

一方で「概念」は「ある物事が何かを表したり、共通する特徴だったりと、一般的に認知されているもの」になります。簡単に言うと「コンセプト」です。

つまり、「観念」と「概念」の違いは、「観念」が主観的な考えであるのに対して、「概念」は客観的な意味内容であるという点です。

それでは、「観念」や「概念」の違いについて例を挙げて見ていきます。

【観念】

  • 10万円の腕時計は安い。
  • バナナは美味しい。

腕時計についての価値観や食べ物の好みは個人差があるので「観念」と言えます。

【概念】

  • 腕時計とは、手首に装着する小型の時計である。
  • バナナとは、熱帯地方で栽培される植物で、弓形の黄色い実がなる果物である。

「概念」は、人によって解釈の変わらない普遍的なものを表します。腕時計やバナナについて上記のような説明をして、「私はそうは思いません」と反論する方はいませんよね。

「理念」との違いは?

「観念」と「概念」に似た言葉に「理念」があります。

「理念」とは「ある物事についてのこうあるべきだという考え」という意味です。簡単に言うと「理想の考え」ですね。

「企業理念」「経営理念」「教育理念」といった使われ方をしますが、たとえば企業理念だと「ある企業のもつ理想の考え」となります。覚えておきましょう。

「固定概念」と「固定観念」はどっちが間違い?

「観念」と「概念」の違いがはっきりしたところで、よく見聞きする「固定概念」という言葉について見ていきたいと思います。

「そんな固定概念は捨てろ!」なんてセリフを聞いたことはありませんか?

「固定概念」は「心の中に凝り固まっていて、その人の思考や行動を規定するような考え」を意味して使われますが、実は誤用なのです。

これまでの説明でお伝えしたとおり、そもそも「概念」は普遍的なものであり、個人によって受け取り方が変わるものではないということが分かりました。つまり、「概念」は初めから固定されていると言えます。

つまり、「捨てろ!」と言われているのは「概念」ではなく、その人独自の意識や考えとなるため、「観念」が正しいということになりますね。よって「固定概念」は間違った表現で、「固定観念」が正しい表現になります。

【例文】

  • 固定観念にとらわれずに、柔軟に考えよう。
  • 自分の固定観念を他人に押し付けるのはよくない。
  • 固定観念を疑うことにより新たな発想が生まれる。

なお、固定観念は固着観念ともいいます。心理学の用語のため、覚えておくと良いでしょう。

「固定観念」と「既成概念」の違いは?

「固定観念」に似た言葉に「既成概念」があります。「固定観念」は「その人の持つ主観的な考え」であることをお伝えしました。

「既成概念」とは「広く社会で認められ、通用している概念」という意味です。混同しやすい言葉ですが、意味は大きく異なるため覚えておきましょう。

まとめ

ここでは似た言葉の「観念」と「概念」について解説しました。

個人の主観的な捉え方なのか、客観的であり普遍的なものなのかという大きな違いがあることが分かりましたね。

これまで混同して使っていた方も、意味が分かればこれからは堂々と正しい言葉を使うことができますね。

また、よく使われる「固定概念」という言い回しが間違いだということに驚かれた方も多いのでは?緊迫した場面で「あなたの固定概念が…」なんて言い間違いをして、恥をかかないように気をつけてくださいね!

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